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みんなで目指そう!発達の最近接領域♪

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ゆうた先生

こんにちは♪ゆうた先生です。

今回は「発達の最近接領域」についてお話していきます。

ヴィゴツキーの「発達の最近接領域」

聞いたことがあるでしょうか?

教育や保育、支援、療育では、この「発達の最近接領域」という考え方がとても大切です♪

それでは、どのような考え方なのか、一緒に見ていきましょう♪

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1.「発達の最近接領域」って?

①発達の最近接領域(ZPD)の定義

発達の最近接領域は「今は一人ではできないけれども、周りの手助けが、支援があると達成できる領域」のことです。

例えば、着替えで上の服を着ることは一人ではまだ難しいけれども、先生が腕を通してあげれば着ることができたとします。
この「先生が腕を通してあげれば着ることができる」という部分、ここが最近接領域です。(厳密には、これだと次のステップに移行しにくいため、更にどこまでできて、どこから難しいのか観察、分析していく必要がありますね)
※私は、ここから更にできるを細分化し、難しくなる境目の部分を見極め、達成できるよう目標設定することが専門性の分かれめと考えています。

「発達の最近接領域」は英訳するとZone of Proximal Development(ゾーン・オブ・プロキシマル・ディベロップメント)、ZPDと表します。

・子どもが自力でできる部分:実際水準
・支援があればできる部分:潜在水準
この間の領域が「発達の最近接領域」です。

ここを適切に設定して教育、療育、保育、支援を行うと、学習や発達が最も促進されます。

②どうして学習や発達が最も伸びるのか?

では、どうして「発達の最近接領域」がより発達を促すのか、いくつか理由を解説していきます♪

・負荷が最適であること
→人は簡単すぎても、難しすぎても、脳は活性化しにくい生き物です。少し難しいな、でも集中したらできるかも、、そういった負荷が一番人にとっては注意と意欲が持続しやすくなっています。(※ゲームなどは巧みに使われていますね)
・内化しやすいこと
→自分の少し先の人をお手本にすると良い、と言いますよね。「少し難しいけどできそうかも」と思えることは、周りの人からの支援を手掛かりにして、自分のスキルへ取り込みやすいです。
・他者とのやりとりから学ぶこと
ことば掛けや共同活動が、思考の枠組みを広げると言われています。どう言葉をかけるのか、一緒に協力してできたという気持ち、そんな部分も発達には欠かせません。

2.生活の中の活用5ステップ

ここからは、生活の中で活用をしていくための基本的な5つのステップを解説していきます。ぜひ、参考にしてみてください♪

(1)ベースライン把握

・一人で取り組む姿を観察していきます。ここで、どこまで細かな部分まで気付くことができたかで、その後の支援の緻密さが大きく異なってきます。「実態把握が大切!」というのはこうしたことからもよく分かりますね♪

(2)最小限の支援から段階的な支援

・合図(視線や指差し)
・手順を言葉で伝える。
・視覚支援(写真、イラスト、手順カード)
・モデリング(見本を見せる)
・身体的ガイド(手添えから少しずつフェードアウト)

(3)大人が支援を行うことでできる部分を見極める

・どの程度の介入度合でどの程度の成功率か考えていくことが大切です。だいたい70~85%の成功率が「発達の最近接領域」の領域となります。

※90%以上は簡単すぎる内容である可能性が高いです。逆に、成功率が半分程度という場合は、目標が難しすぎる可能性があります。

(4)目標や取り組む内容を微調整する

・支援の内容や、環境設定の再調整、手順の細かさ、目標の段階やねらうポイント等を微調整していきます。

(5)記録をとりましょう!

・目標や支援内容、成功率、成功するまでの時間、取り組む際の子どもの気持ち、情緒等を随時記録しておくと、PDCAサイクルが周り、より適切な支援へと近づいていきます。

3.補足「足場がけ」

「発達の最近接領域」を目指し、支援を行っていく上では、「足場がけ(スキャフォルディング:scaffolding)」の考え方も非常に大切です。ここでは、「足場がけ」について解説をしていきます。

「足場がけ」はヴィゴツキーの「発達の最近接領域」を受けて、ブルーナーらが発展させた概念です。ヴィゴツキーの「発達の最近接領域」と似ている部分もありますが、少し異なるので、具体的なステップを載せておきます。

(1)課題理解(目標設定)
・子どもがどこでつまずいているかを観察・分析し、「いま必要な援助レベル」を見極めていきます。
(2)共感・動機づけ(安心の土台)
・「やってみよう」「失敗しても大丈夫」という心理的安全を整えていきます。
 → 安心がないと挑戦すること自体にハードルができてしまいます。
(3)支援の提示(足場の設置)
・言葉、視覚、身体などの方法で支援を行います。
 例:手順カード、口頭の合図、モデリング、手添えなど。
(4)共同遂行(共にやる)
・大人が一緒に課題を行い、子どもが徐々に主導権を持つようにしていきます。
 → 「一緒にやる」→「見守る」への移行が大切です。
(5)フェーディング(足場を外す)
・成功が安定してきたら支援を段階的に減らしていきます。
 例:「声かけ」→「視線合図」→「見守り」の順で消していきます。
(6)自立と般化(自分でできる+他場面でもできる)
・支援がなくてもできる状態を作っていきます。
 → 家庭・園・地域など、他の環境でも再現できるかを確認していきます。

💡Point!

最小から始めて、必要な分だけ支援を足していくイメージが大切です(Least-to-Most)。
・成功が安定してきたところで支援を外すこと(フェージング)。
視覚→言語→身体など、より“内化しやすい”支援を優先していきます。
1回につき、1つのねらい(例:順序の理解/切り替え/音韻意識)。複数を同時に行わないことも大切です。
感情の足場:肯定的なフィードバック、見通しを持たせるための予告や選択肢、安心の合図を先に整えることも大切です♪

4.活用例

ここからは、どんな場面で活用ができるのか、具体例を見ていきましょう♪

例A:ボタン留め(微細運動・生活動作)

自力の場合:2個中0個、指の運び方がわからない
援助ありの場合:モデリングや手順カードの使用で2個中2個成功
→「発達の最近接領域」
介入:①視覚支援(手順表)→②「親指は下から」の言語的な手掛かり→③成功後に支援を少しずつフェードアウトしていく
評価:2週間の取り組みの結果、言語的な手掛かりのみで2個中2個成功
→次は小さいボタンにステップアップをしていく。

例B:SST(ソーシャルスキルトレーニング)「順番待ち」

・自力の場合:列に並ぶことができるが、割り込んでしまうことがあり、トラブルになる
援助ありの場合:視覚順番カードやタイマー、先生の合図等で成功率80%
→「発達の最近接領域」
介入:視覚支援(イラストカード)→言葉と身振りでの合図→言葉での合図のみ→フェードアウト
評価:教室外(公園・店舗)へ般化できるかのチェックを行う

例C:学習面「ひらがな分解・合成(音韻意識)」

・自力の場合:「ねこ」を/ね/こ/に分けられない、「ね」を見て「ねこ」と言ってしまう
援助ありの場合:ひらがなタイルと先生の口の形を見て分けて話すことで70%できる
→「発達の最近接領域」
介入:ひらがなタイル→口形模倣→口頭のみ→内言化
評価:はじめての言葉でも70%正解できれば上がれば少しずつ教材をフェードアウトしていく

例D:運動面「姿勢保持」

・自力の場合:椅子に座って姿勢保持をすることが5秒程度
援助ありの場合:ベンチやブランコを使い、揺れや傾き(前庭刺激)与えると20秒程度保持することが可能
→「発達の最近接領域」
・介入①:前庭入力(覚醒レベル調整)
→ブランコ・バランスベンチ・ロッキングシートで体の中心感覚を活性化させる(5~10分の揺れ入力)
・介入②:粗大運動(感覚統合の統合段階)
→動的バランス(平均台、クッション上でジャンプ、四つ這い移動など)で姿勢制御を遊びの中で強化。
・介入③:机上課題(内化段階)
→粗大運動後に座位課題(パズル・描画・文字書き)を行う。
→“姿勢保持”が行動制御へと転移(内化)する。
→フィードバック(視覚・体性感覚)を統合させる。
評価:机上での活動で5分程度姿勢保持ができることが80%程度で、覚醒状態が安定している場合は、前庭入力の時間を少しずつ短縮し、最終的にはなくしていく
※「覚醒度を整える→運動→机上」という流れがおすすめです♪

例E:実行機能面「宿題の開始」

・自力の場合:宿題の内容自体は理解をしているが、取り組みの開始が難しい
援助ありの場合:環境や時間など構造化された場面では取り組むことができる→「発達の最近接領域」
・介入①:開始合図(トリガー刺激)
→ 例:「スタートボタン」「開始の音」「先生の合図」「LEDライト点灯」などの開始合図を活用し、習慣化を行う。
・介入②:10分タイマー(時間の見える化)
→ 宿題全体ではなく「10分間だけやる」、見通しを持たせて“心理的抵抗”を減らす、タイマーの動きで進行している感覚を受けながら取り組む。
・介入③:ToDoリスト1枚(遂行管理)
→「やることを1枚にまとめ」取り組みを分かりやすく把握する。宿題の視覚的ロードマップを作成する。
→ 終了の達成感を即座に得られる。粗大運動後に座位課題(パズル・描画・文字書き)を行う。
評価:机上での活動で5分程度姿勢保持ができることが80%程度で、覚醒状態が安定している場合は、前庭入力の時間を少しずつ短縮し、最終的にはなくしていく
最終的な姿としては、自分でタイマーをセットして取り組むことができるとよいですね
※「覚醒度を整える→運動→机上」という流れがおすすめです♪

例F:言語面「要求行動」

・自力の場合:指差しやクレーンのみで伝えたい気持ちはあるが、手段がまだわかっていない
援助ありの場合:PECS(ステージ1、2)絵カード交換を使用すると要求を伝えられる→「発達の最近接領域」
・介入①:絵カードを差し出す
→モデルの提示や身体的な支援(手を誘導してカードを渡す)を行い、成立する体験を積んでいく。※成立したらすぐにもらうことができるようにしましょう(強化)
・介入②:距離と自発性を伸ばす
→ 少し離れた位置でカードを自発的に取りに行き、先生や大人に渡し、コミュニケーションを確立していく
・介入③:識別・文構造・語音付与
→欲しいもののイラスト等を選択する→イラストカードと物を交換し、その際に「〇〇ね」という語音ラベルを付けていく。(少しずつカードから言葉での要求に移行していく)
評価:支援の移行(絵カード→言葉)や表現の移行(手渡し→指差し→口頭での要求)、般化(教室→家庭・外出先へ)

取り組みの際の注意点

・注意①:難しい課題をとにかく挑戦させること

→ 「発達の最近接領域」を越えてしまっている難しい課題は失敗学習と回避行動を強化してしまう可能性があります。

・注意②:支援を外さない


→ できるようになっても支援を続けていると、支援に対して依存してしまう可能性があります。成功が続くようであれば必ず支援をフェードアウトしていきましょう。

・注意③:目標や場面の設定が子どもの状態と不一致


→ 覚醒が低すぎたり、逆に高すぎたりすると「発達の最近接領域」から外れてしまう可能性があります。まずは、体や気持ちの安定など整えることが大切です。

・注意④:評価が場面で限定的である


→ 家・園・施設での般化確認を忘れないようにしていきましょう。

・注意⑤:目標が抽象的である


→ 目標が「頑張る」や「落ち着く」など抽象的であると、評価や次に向けての取り組みを設定しにくいです。観察可能な行動で、具体的に数値を取り入れて定義していきましょう。

「発達の最近接領域」を日々運用するミニ・チェックリスト

ここまでで、「発達の最近接領域」についての考え方や、その考え方をもとにした支援方法などは分かったかと思います。
ここでは、日々の支援や教育、保育の中で、意識するとよいチェックリストをお伝えしていきます♪

①今日の自力範囲は把握したか?
できる限り最小の支援で70–85%になる課題を選ぶことができたか?
③成功が続いた後に支援を少しフェードアウトしたか?
④般化(別場面・別人)できているかの確認をしたか?
⑤支援の記録から次回の支援レベルを決めることができたか?

おわりに

「発達の最近接領域(ZPD)」の考え方や、その考え方をもとにした支援は、適切に活用されると、子どもにとっても良い発達となり、支援者、教育者、保育者側にとっても良い支援となります。

ぜひ、日々の支援、療育、子育て、教育などに活用していきましょう♪

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