はじめに|「ちょっと気になる」という気持ちは、もう立派なサインです
「他の子と比べて、ことばが少し遅い気がする」 「集団の中で、うちの子だけ浮いて見える」 「なんとなく…でも、はっきりとは言えないけれど、気になる」
このページにたどり着いた方は、きっとそんな気持ちを抱えているのではないでしょうか。
最初にお伝えしたいのは、その「ちょっと気になる」という感覚は、決して気のせいではないということです。
毎日お子さんと過ごしている保護者だからこそ気づける、小さな違和感。それは長年子どもたちの発達を見てきた私たちから見ても、お子さんを誰よりもよく見ている人にしか持てない、価値ある気づきです。
この記事では、その気持ちをどう受け止めて、これからどう動いていくといいのか。療育の現場で12年以上、発達がゆっくりなお子さんと保護者と関わってきた立場から、整理してお伝えします。
1. 「発達がゆっくりかも」と感じる瞬間は、人それぞれ違う
保護者から相談を受けるとき、「気になり始めたきっかけ」は本当にさまざまです。
- ことばが出るのが遅い、単語数が増えない
- 名前を呼んでも振り向きにくい
- 同じ年齢の子と遊ぶと、なんとなくかみ合わない
- 保育園・幼稚園の先生から「集団行動が難しい」と言われた
- 切り替えが苦手で、一つのことにこだわる
- 食べられるものが極端に少ない
- 音や光、肌ざわりを極端に嫌がる
- 落ち着きがなく、座っていられない
- 1歳半健診や3歳児健診で「経過観察」と言われた
これらの「気になり始め」に、正解も不正解もありません。
そして大切なのは、項目に当てはまるかどうか、ではないということです。チェックリストで丸をつけて点数をつけることに意味はありません。重要なのは、保護者自身が「なんとなく気になる」と感じている、そのこと自体です。
2. その気持ちを、すぐに「大丈夫」で片付けないでほしい理由
「気になる」と誰かに話したとき、こんな言葉をかけられた経験はありませんか。
「気にしすぎだよ」 「うちの子も同じだったけど、いつの間にか話すようになった」 「個性だよ、男の子はそんなものだよ」 「比べちゃダメ」
悪気はないとわかっていても、その言葉でモヤモヤがすっきりするどころか、「自分がおかしいのかな」と感じて、もっと相談しにくくなる。そんな経験をされた方は多いです。
ここで一つ、はっきりとお伝えしたいことがあります。
「気にしすぎ」も「気のせい」も、保護者が一番自分に言ってきた言葉です。 周りに言われる前から、何度も自分に言い聞かせてきたはずです。それでも気になるから、こうして調べているのではないでしょうか。
子どもの発達には個人差があります。それは事実です。ただ同時に、早い段階から関わり方を工夫することで、お子さんがその子らしく伸びていく可能性が広がることも、研究によってわかってきています(※1)。
「個性だから」と「気になるから動く」は、対立しません。個性を大切にしたいからこそ、早めに知っておくという選択もあります。
3. 最初にやるといい、3つのこと
では、具体的に何から始めればいいのか。「いきなり療育に行く」「発達検査を受ける」の前に、もっと手前にできることがあります。
① 気になっていることを、書き出してみる
頭の中でぐるぐる考えていると、不安だけが大きくなります。一度、紙やスマホのメモに書き出してみてください。
書き出すときのポイントは、「いつ」「どんな場面で」「どんなふうに気になったか」を、できる範囲で具体的にすること。
たとえば、
- 「ことばが遅い」→「2歳7ヶ月、単語が10個くらい。2語文はまだ」
- 「落ち着きがない」→「保育園のお集まりの場面で、5分座っていられないと先生から聞いた」
このように整理すると、漠然とした不安が「具体的な情報」に変わります。これは、誰かに相談するときにも、のちのち専門家に話すときにも、大きな助けになります。
② 相談先を、一つだけ知っておく
すべての相談先を調べる必要はありません。「いざとなったら、ここに連絡できる」と思える窓口を一つだけ頭に入れておく。それだけで、心の余裕がまったく変わります。
相談先の選択肢は次のセクションで紹介しますが、ポイントは「予約する」「行く」ではなく、「知っておく」だけでいいということです。
③ 一人で抱えない
これは精神論ではなく、現実的な話です。
発達障害のあるお子さんを育てる保護者は、そうでない保護者と比べて、強いストレスを感じやすいことが、複数の研究で報告されています(※2)。
これは「弱いから」ではなく、周囲に理解されにくく、一人で考え続ける時間が長くなりやすいからです。
パートナー、家族、信頼できる友人、保育園の先生、自治体の保健師、誰でも構いません。一人で抱え込まないことは、お子さんへの支援と同じくらい大切です。
4. 相談先の選択肢
「相談先」と言っても、種類はいくつもあります。それぞれ役割が違うので、お子さんの状況や、保護者が今ほしい情報によって、合う場所が変わります。
◆ 市町村の子育て相談窓口・保健センター
最も気軽に、無料で相談できる窓口です。山梨県内の各市町村には、保健師さんに発達のことを相談できる窓口があります。健診で「経過観察」と言われた方は、まずここに連絡してみるのが自然です。
◆ 通っている保育園・幼稚園の先生
集団の中での様子は、家庭では見えません。先生は他の同年齢のお子さんも見ているので、家庭とは違う角度の情報をくれます。「気になっているので、園での様子を教えてほしい」と伝えるところから始められます。
◆ 小児科・かかりつけ医
医学的な視点からのアドバイスがほしい場合や、発達検査を受けることを考えている場合は、まずかかりつけの小児科に相談するのが入り口になります。必要に応じて専門の医療機関を紹介してもらえます。
◆ 児童発達支援・放課後等デイサービス
ここが、私たちSHIPが提供しているサービスです。「発達がゆっくりかもしれない」と感じているお子さんが、専門スタッフのもとで遊びや生活を通して力を伸ばしていく場所です。
利用には自治体の受給者証が必要ですが、「利用するかどうか決める前に、話を聞きにくる・見学に来る」だけでも大丈夫です。
◆ 相談支援専門員(計画相談)
どの支援を選んでいいかわからない、というときに、お子さんと家庭の状況を聞いた上で、合うサービスを一緒に考えてくれる専門職です。市町村の窓口で紹介してもらえます。
5. SHIPでは、「迷っている段階」での相談も歓迎しています
最後に、私たちのことを少しだけ。
SHIPは、山梨県笛吹市と中央市で児童発達支援・放課後等デイサービスを運営している施設です。
ここまで読んでくださった方の中には、「相談したいけど、利用すると決めたわけじゃないし…」と感じている方もいると思います。
SHIPは、利用を決めてから来る場所ではありません。
「ことばが遅い気がして、どうしたらいいかわからない」 「療育って、何をするところなのかも知らない」 「うちの子に合うのかどうか、まずは話を聞いてみたい」
そういう段階の保護者からのご相談を、たくさんお受けしています。来てくださった方の中には、話してみた結果「もう少し家で様子を見ます」と決めた方もいます。それで全く構いません。
「話を聞いて、整理する」だけでも、不安はずいぶん軽くなります。
ご相談は、LINEや問い合わせフォームから受け付けています。「ちょっと話を聞きたい」の一言で大丈夫です。
おわりに|気にかけている、それ自体が、お子さんへの一番の支援です
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
最後にもう一度だけ、お伝えしたいことがあります。
「気になる」と思って情報を探している。それ自体が、お子さんへの最大の関わりです。
何もしていないように感じる日も、実は保護者は、毎日お子さんを見て、考えて、心配しています。それは目に見えにくいけれど、お子さんがこれから育っていく上で、何より大きな土台になります。
一人で抱え込まず、気になったときに、気になった分だけ、誰かに話してみてください。私たちもその一つの選択肢として、いつでもお待ちしています。
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受付:24時間 / 返信:9:00〜20:00(土日祝も対応)
参考文献
※1 Zwaigenbaum, L., et al. (2015). Early Intervention for Children With Autism Spectrum Disorder Under 3 Years of Age: Recommendations for Practice and Research. Pediatrics, 136 (Supplement_1), S60–S81. — 早期からの計画的な関わりが、発達のさまざまな領域に良い影響を及ぼすことが報告されている。
※2 Hayes, S. A., & Watson, S. L. (2013). The Impact of Parenting Stress: A Meta-analysis of Studies Comparing the Experience of Parenting Stress in Parents of Children With and Without Autism Spectrum Disorder. Journal of Autism and Developmental Disorders, 43(3), 629–642. — 発達障害のあるお子さんを育てる保護者は、定型発達のお子さんを育てる保護者と比べて、有意に高い育児ストレスを経験することが示されている。

