保育園や幼稚園で「一人で遊ぶことが多い」「友達の遊びに入りにくい」「関わろうとするとトラブルになりやすい」と聞くと、保護者の方は心配になるかもしれません。
けれども、その姿だけで「友達が嫌い」「協調性がない」と性格を決めたり、診断と結びつけたりすることはできません。一人で遊ぶことを楽しんでいる場合もあれば、関わりたいけれど入り方が分からない、ことばで思いを伝えにくい、集団の刺激で疲れているという場合もあります。
大切なのは、無理に友達と一緒に遊ばせることではなく、どんな場面・相手・支えがあると、本人が安心して関われるのかを丁寧に見ることです。
ゆうた先生一人遊びが多いことだけで問題とは決めません。どんな相手・場面・支えなら関わりやすいかを見ていきます。
一人遊びが多いことだけで、問題とは決められません
「友達との関わりが苦手」と見える姿は、一人ひとり違います。
- 一人で好きな遊びを続けている
- 友達の近くには行くが、同じ遊びには入らない
- 友達の遊びに入りたい様子はあるが、声のかけ方が分からない
- おもちゃを使いたいとき、ことばより先に手が出る
- 順番やルールが分からず、途中で離れる
- 誘われても返事ができず、関わりが終わってしまう
- 大勢の中では難しいが、落ち着いた場面ではやりとりできる
見る必要があるのは、一人でいる時間の長さだけではありません。本人はその時間をどう過ごしているか、友達へ関心を向ける瞬間はあるか、困っている場面はどこか、どのような助けがあると関われるかを合わせて考えます。
一人でじっくり遊ぶ時間も、興味を深めたり、気持ちを整えたりする大切な時間になり得ます。「一人遊びをやめさせる」ことから始める必要はありません。
友達との関わりは、行きつ戻りつ育っていきます
人との関わりは、「一人遊びの次は必ず一緒に遊ぶ」という一本道ではありません。その日の気持ち、相手、遊びの内容、周囲の音や動きによって、関わりやすさは変わります。
例えば、次のような経験を行き来しながら、少しずつ関わり方が増えていくことがあります。
- 安心できる大人と遊ぶ
- 友達がいる場所で、自分の遊びを続ける
- 友達の遊びを見る、まねをする
- 同じ物に気づいたり、楽しさを共有したりする
- 物の受け渡しや交代を短く経験する
- 共通の遊びや簡単なルールを一緒に楽しむ
すべてを同じ順番で経験するわけではありません。好きな遊びでは関われても、慣れない遊びでは一人に戻ることもあります。戻ることを失敗と捉えず、今の本人が参加しやすい形を探します。
関わりにくさの背景を考える5つの視点
同じ姿に見えても、必要な支援は異なります。次の5つの視点を分けて見ると、関わりやすい条件を考えやすくなります。
1.友達への関心と、心地よい距離
友達をよく見ているか、近くで同じ遊びをしているか、特定の相手なら関わるかなどを見ます。近づかないことだけで関心がないとは限りません。離れた場所から様子を見ることが、その子なりの関わりの始まりである場合もあります。
大人が距離を急に縮めず、本人が安心できる位置や関わる時間を尊重することが大切です。
2.共有しやすい遊びや興味
好きな物や遊びは、人と関わるきっかけになります。同じ物を見る、同じ動きを楽しむ、できたものを見せるなど、「一緒に遊ぶ」より前に見られる小さな共有も大切な姿です。
一方で、遊びの内容が分からない、展開が速い、途中から入りにくいといった理由で参加しづらいこともあります。本人が分かりやすく、興味を持てる活動かを確認します。
3.思いを伝える方法
友達との場面では、「貸して」「入れて」だけでなく、「まだ使いたい」「やめて」「手伝って」など、さまざまな思いを伝える必要があります。
ことばが出るかだけでなく、指差し、身ぶり、表情、大人へ助けを求めることなど、本人が今使える方法を見ます。手が出たり、その場を離れたりする姿があるときも、まず安全を確保し、その行動の前に何を伝えたかったのかを考えます。
4.相手の反応や遊びの流れの分かりやすさ
友達との遊びでは、相手の表情やことばに気づく、順番を待つ、遊び方の変化に合わせるといったことが求められます。これらは同時に起こるため、分かりにくさがあっても不思議ではありません。
大人が今起きていることを短く伝える、次の順番を見えるようにする、やりとりの見本を示すなど、場面を理解するための支えが役立つことがあります。
5.集団で受ける負担と、気持ちを整える方法
人の声や動きが多い場所では、遊びの内容を理解しながら友達へ応じることが負担になる場合があります。疲れたときに一人になろうとすることも、本人が気持ちを整えるための行動かもしれません。
どのような場面で負担が高まりやすいか、休める場所や大人の支えがあると戻りやすいかを見ます。参加し続けることだけでなく、休む、断る、助けを求めることも大切な力です。
無理に「一緒に遊ばせる」前にできること
友達との経験を増やそうとして、急に輪の中へ入れたり、長く同じ遊びを続けさせたりすると、本人にとって人との関わりがつらい経験になることがあります。
まずは、本人がすでにできている関わりを土台にします。
- 一人で遊ぶ時間を安心して過ごせるようにする
- 好きな遊びへ大人が穏やかに加わる
- 友達の近くで同じ物を使う時間をつくる
- 短い受け渡しや交代を、大人が間に入って支える
- 「入れて」に限らず、本人が使いやすい伝え方を用意する
- 嫌なときに断る、離れる、助けを求める方法も伝える
目標は、いつも友達と遊ぶことではありません。本人が人との距離を選び、自分の思いを伝え、必要なときに安心して関われる方法を増やすことです。
個別活動で土台を確かめ、小集団で使ってみる
個別活動では、周囲の情報を調整しながら、本人の興味や得意なこと、伝えやすい方法、待つ・交代するために必要な支えを丁寧に確かめられます。
- どんな遊びなら人と楽しさを共有しやすいか
- 要求、拒否、助けてほしい気持ちをどう伝えているか
- どのくらいのやりとりなら安心して続けられるか
- 見本、ことば、絵など、何が分かりやすい手がかりか
- 気持ちが動いたとき、どんな支えがあると整えやすいか
小集団では、個別活動で分かった方法を、友達の動きや思いがある場面で使ってみます。うまくいかなかったときは本人だけの課題にせず、活動の内容、伝え方、大人が入る位置などを振り返ります。
「個別ができたら小集団へ進み、もう戻らない」というものではありません。個別で確かめ、小集団で試し、必要に応じて個別へ戻って方法を調整する。その往復が、その子に合った支援を考える材料になります。
個別活動の組み立ては「SHIPの個別活動」、個別と小集団の役割の違いは「個別療育と小集団療育、どちらが合う?」、小集団で大切にする経験は小集団支援の解説で詳しく紹介しています。
家庭や園で、できた条件を持ち寄る
家庭で友達との遊びを繰り返し練習する必要はありません。日常の中で、本人が人と関わりやすかった場面を短くメモしておくと、支援を考える手がかりになります。
- 誰と、どこで、何をしていたか
- 本人から近づいたのか、誘われたのか
- 何があるとやりとりが続いたか
- 難しくなる直前に何が起きていたか
- 大人がどう関わると落ち着いたか
- 本人が楽しそうだったこと、避けたかったことは何か
園では難しくても家庭では関われる、相手によって姿が変わることはあります。どちらかを「本当の姿」と決めず、それぞれの場面で力を出しやすい条件を整理することが大切です。
家庭と園で見える姿が違うときは、「家では困らないけれど園では困るときの考え方」も参考になります。
相談は、診断や利用を決めてからでなくてもかまいません
次のような状況が続き、本人や周囲が困っているときは、園や地域の相談窓口、児童発達支援などへ相談する方法があります。
- 関わりたい様子はあるが、入り方が分からず困っている
- 友達との場面で、手が出る、固まる、その場を離れることが続く
- 集団の後に強く疲れたり、不安そうにしたりしている
- 一人で過ごすことを本人がつらそうにしている
- 大人がどう支えればよいか迷っている
相談することは、診断を決めることでも、すぐに通所を決めることでもありません。今の姿と、安心して関われる条件を一緒に整理するための相談もできます。
就学前の集団参加そのものが気になっている方は、「集団に入れない子の就学準備」で、入学までに大切にしたい見方を紹介しています。
SHIP中央で、今のお子さまの姿から一緒に考えます
児童発達支援事業所SHIP中央では、一人ひとりの育ち方を丁寧に見立て、個別活動と小集団支援を組み合わせながら、その子に合う関わり方を考えています。
友達と遊ばせることを急ぐのではなく、どのような遊び、伝え方、大人の支えがあると安心して関われるのかを整理します。支援の考え方や利用までの流れは、SHIP中央の案内ページでご確認ください。
よくある質問
一人遊びが多いと、必ず支援が必要ですか?
一人遊びが多いことだけで、支援の必要性は決まりません。本人が楽しんでいるか、友達に関心を示す場面はあるか、園生活で本人や周囲が困っているか、少しの支えで姿が変わるかなどを合わせて考えます。
友達に手が出るとき、どう見ればよいですか?
最初に本人と相手の安全を守ります。そのうえで、使いたい、やめてほしい、入りたい、順番が分からないなど、直前の状況と伝えたかったことを考えます。「してはいけない」と伝えるだけで終わらせず、代わりに使えることば、身ぶり、大人への助けの求め方を一緒に探します。
友達をつくることを目標にした方がよいですか?
特定の友達をつくることや、いつも一緒に遊ぶことを一律の目標にする必要はありません。本人が自分の気持ちを伝え、相手の存在を感じながら、必要なときに安心して関われる方法を増やすことを大切にします。
診断がなくても相談できますか?
診断の有無だけで相談の必要性が決まるものではありません。まず今のお子さまの姿を整理したい場合は、園や地域の相談窓口、児童発達支援事業所などへ相談できます。SHIP中央の現在の相談方法は、上の案内ページ、フォーム、LINEでご確認ください。
友達と関わる形は、一人ひとり違います
友達との関わりが苦手に見えるとき、急いで輪の中へ入れるより、本人が安心できる距離、興味、伝え方、環境を見つけることが支援の出発点になります。
個別活動で関わりの土台を確かめ、小集団で使ってみて、また振り返る。できなかった場面だけでなく、少しの支えでできた場面を積み重ねることで、その子に合った次の一歩を考えられます。
山梨県中央市で児童発達支援・放課後等デイサービスをお探しの方へ
SHIP中央では、子ども一人ひとりの発達や特性、行動の背景を丁寧に捉え、その子に合った支援を一緒に考えています。見学やご相談も受け付けていますので、利用をご検討の方はSHIP中央のページをご覧ください。

