トイレへ誘うと「イヤ」と逃げる。便座に座ってもすぐ降りる。園ではできるのに、家では行こうとしない。失敗のたびに親子ともにつらくなり、「まだおむつなの?」という周囲の言葉に焦ることもあるかもしれません。
そんな中でも、着替えを持ってこられる、出たことを身振りで知らせられるなど、すでにできていることが出発点になります。
保護者A子どもがトイレを嫌がる背景は一つではありません。感覚や環境、姿勢、見通し、遊びからの切り替え、痛みや便秘を分けて考えましょう。目指すのは早くおむつを外すことだけでなく、安心して排泄を伝え、生活の流れに参加できることです。
1.トイレを嫌がるのは「やる気がない」からとは限りません
例えば、次のような負担が考えられます。
- 足が届かず、便座に座る姿勢が不安定
- 音、におい、明るさ、狭さが気になる、流れる音が怖い
- 遊びを中断する理由や、座る時間の終わり、次の動作が分からない
- ズボンや下着の上げ下げが難しい
- 尿意・便意に気づきにくい、伝えにくい
- 以前の失敗や叱られた経験を思い出す
- 排尿・排便の痛みや便秘で、排泄そのものがつらい
これは診断ではなく、様子を確かめる視点です。わがままや保護者の関わり方だけの問題にせず、繰り返し座らせる前に、何が負担なのかを見てみましょう。
2.まずは「いつ、何を嫌がるか」を確認します
| 確認する場面 | 実際に見ること | 支援の手掛かり |
|---|---|---|
| 誘う前 | 遊びへの集中、表情、排泄の間隔 | 誘うタイミングを見直す |
| トイレへの移動 | 移動、扉、照明、音への反応 | 環境や伝え方を整える |
| 便座に座るとき | 足元、姿勢、便座への不安 | 安全に姿勢を支える |
| 排泄後 | 拭く、流す、着衣、手洗い | 一連の動作を分ける |
| 失敗したとき | 子どもの反応、大人の対応 | 安心して伝えられる関係をつくる |
「扉までは行けたが、流す音で耳をふさいだ」が観察した事実、「音が怖いのかもしれない」が考えられる背景です。できた・できなかっただけでなく、どこまで参加できたかを見ます。
しっぷくん3.家庭で試したい5つの工夫
工夫1:排泄のリズムを大まかに把握する
起床後や食事後など、排泄しやすい時間帯を見てみます。毎回細かく記録せず、「朝は出ることが多い」程度でも構いません。失敗の数より、うまくいきやすい条件を探します。
一律の間隔で頻繁に誘わず、本人の様子と生活リズムを手掛かりにしましょう。失敗を減らすための水分制限はしません。
工夫2:誘う前に見通しを伝える
遊びの途中で突然連れていく前に、「この遊びが終わったらトイレ」と短く予告します。言葉だけでは分かりにくければ、写真やイラスト、簡単な予定表で「トイレ→手洗い→遊び」を示します。
「行く?」「まだ?」と質問を重ねず、次の行動を穏やかに知らせます。予告しても強く嫌がるときは、無理に進めず負担を確かめましょう。
工夫3:トイレの環境と姿勢を確認する
足元は安定しているか、便座の穴の大きさに不安はないかを確認します。補助便座や足台は、製品の使い方に沿って、ずれやぐらつきがないものを使います。箱や家具を積み重ねた代用品は避けます。
照明、換気、におい、ペーパーの感触や洗浄音も見直します。音が怖ければ、本人が離れてから大人が流す方法もあります。上げ下げしやすい服装も助けになります。
しっぷくん工夫4:一連の行動を小さな段階に分ける
取り組める部分を探すための例です。全員が順番どおりに練習する必要はありません。
- トイレの前まで行く
- 中へ入る
- 本人が受け入れられれば、服を着たまま短く便座へ座る
- ズボンを下ろす
- 排泄する
- 拭く
- 服を整える
- 水を流す
- 手を洗う
今できる段階の少し先を目標にし、難しい部分は大人が手伝います。「入れたら今日は終わり」でも一歩です。長時間座らせたり、出るまでトイレから出さなかったりせず、本人の様子に合わせて切り上げます。
工夫5:成功だけでなく「伝えられたこと」を認める
「出た」と伝えた、交換してほしいと示した、前まで行けた、ズボンに手をかけた、失敗後に落ち着いて着替えられた。どれも生活に参加する力です。
「教えてくれてありがとう」「ズボンに手をかけられたね」と具体的に返します。言葉だけでなく、指差しや身振り、カードでの伝え方も受け止めましょう。
ゆうた先生4.避けたい対応
無理に座らせる、長く座らせる、失敗を叱る・からかう・責める対応は避けます。兄弟や同年齢の子と比較したり、「もうお兄さん・お姉さんなのに」と恥を感じさせたりする必要もありません。
汚れた衣服を罰として扱う、水分を減らす、食べ物を強いご褒美や取引条件にする方法も勧めません。失敗時は「着替えようね」と短く穏やかに対応します。排泄の情報を本人の同意なく人前で話さず、尊厳とプライバシーを守りましょう。
5.園と家庭で様子が違うとき
「家では甘えている」と決めつけず、誘う時間や声かけ、便器・便座・足元、トイレへ行く流れ、音や人の数、服装を比べてみます。園では友達の行動が手掛かりになり、家庭では安心して気持ちを出している可能性もあります。
方法を完全に統一するより、「園ではどんな誘い方だと行けるか」「家では何があると落ち着くか」を共有します。できる場面の条件を、無理のない範囲で取り入れましょう。
6.医療機関などへの相談を検討したい様子
排尿・排便時の痛み、硬い便や便秘、血が付く、強く我慢し続ける、下着が頻繁に汚れる場合は、小児科などへ相談してください。下着の汚れは便秘に伴う場合もあり、本人の不注意と決めつけられません。
排尿時の痛みや発熱、排泄の急な変化、食欲・睡眠・体調の変化も相談の手掛かりです。特に排尿の症状に発熱が伴うときは、練習で解決しようとせず、早めに医療機関へ相談しましょう。
保護者だけで抱えることが難しいときも相談して構いません。便秘や痛みがあれば練習を無理に進めず、身体の状態を確認することを優先します。
7.SHIP中央で大切にしていること
私たちは山梨県中央市で、未就学児の個別活動や小集団支援、日常生活につながる支援を行っています。できていることと、助けがあれば取り組めることを確認します。
SHIPでは、排泄の結果だけでなく、尿意・便意への気づきや伝え方、遊びからの切り替え、着脱、手順の理解、姿勢や身体の使い方を分けて支援を考えます。家庭や園の様子を伺い、保護者の同意のもと必要な情報共有を行います。個別活動の考え方もご覧ください。病気の診断や治療は医療機関へご相談ください。
8.よくある質問
Q1.何歳までにおむつを外した方がよいですか?
一律の年齢だけで判断せず、発達や身体の状態、本人の気づき・伝え方を見ながら進めます。
Q2.トイレへ誘うと泣く場合も座らせた方がよいですか?
強く嫌がるときは無理に座らせず、嫌がる段階を確認します。前まで行くなど、受け入れられる小さな段階から考えましょう。
Q3.園ではできるのに家庭でできないのはなぜですか?
環境、流れ、声かけ、周囲の子どもの存在など、条件の違いが関係する可能性があります。
Q4.便秘がある場合もトイレ練習を続けてよいですか?
便秘や排便の痛みがトイレへの不安につながる場合があります。無理に進めず、小児科などへ相談してください。
あわせて読みたい記事
参考情報
- SHIP中央公式ページ
- こども家庭庁「児童発達支援ガイドライン」(令和6年7月)掲載ページ
- こども家庭庁「保育所保育指針・解説」(平成30年度~)掲載ページ
- こども家庭庁「母子健康手帳情報支援サイト/育児のしおり」
- 日本小児栄養消化器肝臓学会「便秘ガイドライン〈患者様〉」
- 日本小児泌尿器科学会「小児の尿路感染」
情報確認日:2026年9月22日。便秘の説明は学会公開の保護者向け資料を参照しています。診療ガイドラインは2025年版が発刊され、学会の案内では保護者向けパンフレットは改訂作業中とされています。
子どものトイレの悩みを、一緒に整理しませんか
トイレを嫌がるときは、身体の状態、姿勢、環境、伝え方、行動の流れを分けて考えることが大切です。まずは、今日安心して参加できた場面を一つ見つけてみましょう。
まだSHIPを利用するか決めていない段階でも、見学や相談が可能です。ご家庭や園での様子、今困っている場面をお聞かせください。

