「着替えて、歯を磨いて、かばんを持ってきて」
そう伝えたのに、遊びを続けている。何度声をかけても着替えが進まず、出発時間が近づくにつれて「早くして!」が増えてしまう。
朝の支度をめぐって、親子ともに疲れてしまうことはありませんか。
朝は時間が限られているため、保護者の方が焦るのは自然なことです。一方、子どもにとって朝の支度は、いくつもの行動を順番に進める必要がある、意外と複雑な活動です。
今回は、朝の支度が進みにくい背景と、家庭で試せる5つの工夫を紹介します。
朝の支度は、たくさんの行動がつながっています
大人には「朝の支度」という一つの行動に見えても、実際には次のような行動が含まれています。
- 布団や遊びから気持ちを切り替える
- パジャマを脱ぐ
- 服の前後や順番を確認する
- 服を着る
- 朝食を食べる
- 歯を磨く
- 持ち物をそろえる
- 靴を履く
- 家を出る
この一連の流れを、自分で覚え、順番を考え、時間内に進める必要があります。
「早く支度して」という言葉だけでは、最初に何をすればよいのか分からない子もいます。
ゆうた先生朝の支度は「一つのこと」ではなく、小さな行動の連続です。まず、どの場面で止まっているかを見てみましょう。
支度が進みにくい背景は一つではありません
朝の支度が進まない姿だけを見て、「やる気がない」「言うことを聞かない」と決めることはできません。
例えば、次のような背景が考えられます。
- 一度に複数のことを言われると、何をするのか分からなくなる
- 支度の順番を覚えておくことが難しい
- 遊びやテレビを終えることに時間がかかる
- 服の前後や着方が分かりにくい
- ボタンやファスナーなどの操作が難しい
- 服の素材やタグ、締めつけが気になる
- 眠気、疲れ、空腹などの影響を受けている
- 園へ行くことに不安を感じている
複数の理由が重なっていることもあります。
大切なのは、できなかった回数を数えることではなく、「どの場面で止まりやすいのか」「何があると動きやすいのか」を見つけることです。
工夫1.一度に一つの行動を伝える
「着替えて、歯を磨いて、かばんを持ってきて」と一度に伝えると、最初の行動が分からなくなることがあります。
まずは、「パジャマを脱ごう」「次は、この服を着よう」「着替えたら、歯を磨こう」というように、一度に一つずつ具体的に伝えます。
「ちゃんとして」「早く準備して」ではなく、今してほしい行動が分かる言葉にすることがポイントです。
伝えた後は、子どもが言葉を受け取り、動き始めるまで少し待ちます。すぐに同じ言葉を重ねると、かえって聞き取りにくくなることがあります。
工夫2.支度の順番を見えるようにする
言葉だけで順番を覚えることが難しい場合は、写真や絵を使って流れを見えるようにします。
例えば、朝の支度を次の4つに絞ります。
- 服を着る
- 朝ごはんを食べる
- 歯を磨く
- 靴を履く
文字を読むことが難しい子には、実際に使う服や歯ブラシの写真でも構いません。
終わった項目を裏返す、カードを外す、チェックを付けるなど、「終わったこと」が分かる形にすると、次の行動へ移りやすくなる場合があります。
最初から細かい予定表を作りすぎず、特に止まりやすい3~4項目から始めるのがおすすめです。
工夫3.最初の一歩だけ一緒に行う
何をするか分かっていても、最初の動作を始めることが難しい場合があります。
そのようなときは、全部やってあげるのではなく、最初の一歩だけ一緒に行います。
- 服を子どもの前に並べる
- シャツの裾を一緒に持つ
- 片方の靴下だけ履くのを手伝う
- 歯ブラシを一緒に取りに行く
- かばんに入れる物を一つだけ渡す
始められた後は少し待ち、続きができるか見守ります。
目標は、すぐに全部一人でできるようにすることではありません。「大人と一緒なら始められた」「最初の一つが分かれば続けられた」という経験を重ねることが大切です。
工夫4.小さな選択肢を用意する
大人に言われたことが続くと、支度そのものを嫌がる子もいます。
その場合は、「青い服と黄色い服、どちらにする?」「着替えと歯磨き、どちらから始める?」「自分でかばんを持つ?一緒に持つ?」というように、無理なく選べる範囲で子どもに決めてもらいます。
何でも自由にするという意味ではありません。大人が準備した二つの選択肢から自分で選ぶことで、支度に参加しやすくなる場合があります。
工夫5.できた部分を具体的に伝える
すべての支度が終わったときだけ評価すると、子どもが「できた」と感じる機会が少なくなります。
- 「自分でシャツに腕を通せたね」
- 「カードを見て、歯ブラシを取りに行けたね」
- 「テレビを消して、着替えを始められたね」
- 「声をかける前に靴を持ってこられたね」
このように、実際にできた行動を短く伝えます。
「えらい」「すごい」だけでなく、何ができたのかを具体的に伝えることで、次に取る行動も分かりやすくなります。
ゆうた先生全部できた時だけでなく、「始められた」「一つ進めた」という小さな変化も、ぜひ言葉にして伝えてみてください。
うまくいかない日は、方法を見直す手がかりです
昨日はできたのに、今日は進まないこともあります。
その日の眠気や体調、園の予定、服の着心地、周囲の音、支度を始めた時間などによって、子どもの動きやすさは変わります。
うまくいかなかったときに、保護者の方や子どもの努力不足と考える必要はありません。
- 指示する量が多くなかったか
- 最初の行動が分かっていたか
- 服や道具を扱いにくそうにしていなかったか
- 遊びを終える予告が必要ではなかったか
- 支度の時間そのものに無理がなかったか
といった点を、一つずつ確認してみましょう。
一度にすべてを変えず、一つの工夫を数日試して、子どもの反応を見ながら調整していきます。
相談してもよい目安
次のような状態が続く場合は、家庭だけで抱えず、園や地域の相談窓口、児童発達支援などへ相談することもできます。
- 毎朝の支度で親子の負担が大きくなっている
- ほとんどの行動に大人の手伝いが必要
- 着替えや持ち物の準備を強く嫌がる
- 服の素材や音などへの苦手さが生活に影響している
- 家庭だけでなく、園でも支度や切り替えに困っている
- どのように手伝えばよいのか分からない
朝の支度が苦手という一つの様子だけで、診断の有無を判断することはできません。相談は、診断を決めるためだけではなく、その子に伝わりやすい方法や、無理のない支え方を一緒に探すためにも利用できます。
痛み、睡眠、食欲など健康面で気になることがある場合は、かかりつけの医療機関へご相談ください。
SHIP中央では、生活の中の「できた」を一緒に探します
児童発達支援SHIP中央では、着替え、身支度、片付けなど、日常生活の困りごとも相談できます。
単に「一人でできるように練習する」のではなく、次の点を確認しながら、一人ひとりに合った支援を考えます。
- どの段階で止まりやすいのか
- どのような伝え方なら分かりやすいのか
- どのくらいの手伝いがあれば取り組めるのか
- 手先や身体の使い方に難しさがないか
- 家庭や園で続けやすい方法は何か
SHIP中央は、山梨県中央市にある0~6歳の未就学児を対象とした児童発達支援事業所です。
「このくらいのことで相談してよいのかな」「利用するかは決めていないけれど、話を聞いてみたい」という段階でも、見学やご相談を受け付けています。受給者証がまだない方もご相談いただけます。
中央市、昭和町、甲府市南部、南アルプス市、市川三郷町周辺で、お子さんの朝の支度や園生活について気になることがある方は、お気軽にお問い合わせください。
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