「お風呂に入ろう」と言うと逃げる。浴室へ入るだけで泣く。身体は洗えても洗髪を嫌がり、顔に水がかかると取り乱してしまう。急かしたり叱ったりして、毎晩親子ともに疲れていませんか。
保護者A同じ「お風呂が嫌」でも、嫌がる段階や理由は異なります。子どもがお風呂を嫌がるときに、家庭で試せる工夫を紹介します。毎日すべてを完璧に行うことだけを目標にせず、安全と清潔を守りながら続けられる方法を探しましょう。
1.お風呂を嫌がるのは「わがまま」とは限りません
遊びを中断しにくい、脱衣時の温度変化が苦手、浴室の反響音や換気扇、シャワーの音・水圧が怖い、お湯の温度が合わないなど、背景はさまざまです。
顔や頭への水、目を閉じて先が見えないこと、床や浴槽内で身体が安定しないことへの不安も考えられます。石けんの香り・泡・ぬるつき、順番や終わりの分かりにくさ、水やシャンプーが目に入った経験も手掛かりです。湿疹や傷にしみる、かゆいなど身体の状態も確認します。反応だけで「感覚過敏」「発達障害」と断定はできません。
2.入浴のどこで嫌がるかを確認します
「入浴できた・できなかった」だけでなく、どこまでは落ち着いて参加できたかを見ます。表は横にスクロールできます。
| 確認する場面 | 実際に見ること | 支援の手掛かり |
|---|---|---|
| お風呂へ誘うとき | 遊び、眠気、声かけへの反応 | 予告や時間帯を見直す |
| 服を脱ぐとき | 温度、着替え、脱衣所への反応 | 室温や準備を整える |
| 浴室へ入るとき | 音、明るさ、床、水への反応 | 環境の負担を確認する |
| 身体を洗うとき | 泡、香り、触られ方、水圧 | 洗い方や道具を調整する |
| 髪や顔を洗うとき | 姿勢、水の方向、目を閉じる不安 | 手順や水のかけ方を見直す |
| お風呂から出るとき | 終了、身体を拭く、着替え | 終わりまでの流れを示す |
しっぷくん3.家庭で試したい5つの工夫
工夫1:嫌がる場面を細かく分ける
遊びを終える、脱ぐ、浴室へ入る、シャワーを使う、身体に触れられる、髪や顔を洗う、湯船に入る、拭く、パジャマに着替える。こうして分けると、入浴全体を変えずに、負担のある部分を調整できます。「浴室には入れたが、シャワーの音で泣いた」など、実際の様子を短く残すのも一案です。
工夫2:入浴前に流れを伝える
「あと5分でお風呂」などと予告し、必要ならタイマーを見通しのために使います。「服を脱ぐ→身体を洗う→髪を洗う→湯船→出る」など、家庭の実際の手順を写真や絵で示し、拭いて着替える最後まで伝えます。湯船を使わない日はカードも合わせます。タイマーを罰にしたり、玩具を捨てると脅したりはしません。
ゆうた先生工夫3:音・温度・水圧などの環境を調整する
新しく道具を買う前に、お湯や脱衣所の温度、シャワーの水圧を確認します。水圧を弱め、水をかける前に声をかけましょう。換気扇や反響音、製品の強い香りも確かめます。必要な換気は保ち、足元や表情が見えないほど暗くしません。床の滑りと姿勢の安定を確認し、タオル・着替えは入浴前に準備します。
しっぷくん工夫4:子どもが選べる部分をつくる
「どちらのタオル?」「身体と髪、どちらから?」「シャワーと洗面器、どちらにする?」など、安全な選択肢を二つ程度に絞ります。玩具を一つ選ぶ、自分で洗うか手伝ってもらうかを選ぶ方法もあります。「入る・入らない」の二択で迫らず、嫌という気持ちも受け止めて調整します。選んだ方法でも危険があれば大人が安全を優先します。
工夫5:できた工程と伝えられたことを認める
浴室の前まで行けた、服を一枚脱げた、「待って」と言えた、身体の一部を洗えた、短時間落ち着いて入れた、終わりまでの流れを確認できた。そんな参加を具体的に伝えます。「泣かなかった」「全部洗えた」だけでなく、不安や希望を言葉や身振りで伝えられたことも大切な成長です。
4.洗髪や顔への水を特に嫌がる場合
予告なく顔へ水が流れていないか、頭や首が不安定でないか、目を閉じるのが怖くないかを確認します。音・水圧、目や傷へのシャンプー、大人が急いで強く支えていないかも見直します。
流す回数を先に伝え、「1、2、3」と合図する、洗面器やシャワーを本人が確かめる、顔を拭くタオルを手元に置くなどを試します。工程は短く分かりやすくし、安定する姿勢を探します。「待って」の合図があれば一度止め、再開できるか確かめましょう。
5.避けたい対応
泣く子を強引に連れていく、押さえつけて洗う、突然頭や顔に水をかける対応は避けます。「汚い」「赤ちゃんみたい」と恥を感じさせる、きょうだいと比べる、長く説得する、入浴を罰やご褒美の取引にする方法も勧めません。
理由を確かめず同じ方法を続けず、安全と衛生を保てる別の手順を考えます。子どもを浴槽や浴室に残して離れることはしません。
6.入浴時の安全について
こども家庭庁・消費者庁の注意喚起を踏まえ、次を守りましょう。
- 未就学児を一人で入浴させず、大人が手の届く範囲で見守る。浴槽・浴室に残して離れない。
- 大人が洗髪するなど目を離す状況では、子どもを浴槽から出す。出した後も安全を確保し、そばで見守る。
- 浮き輪などの道具を見守りの代わりにしない。
- 子どもは大人の後に浴室へ入り、先に出る。出入りにも付き添う。
- 入浴後は浴槽・洗面器・バケツの水を抜く。少ない残り水でも危険がある。
- 外鍵やゲートなどで、一人で浴室へ入れない環境を整える。浴槽のふたに頼らない。
- 床の滑り、浴槽をまたぐときの転倒、お湯の温度にも注意する。
短時間なら一人でもよいという意味ではありません。タオルを取りに行くなどの用事も、子どもを残して行わないよう準備します。
7.相談を検討したい様子
お湯や石けんで強く痛がる、湿疹・傷・赤み・かゆみが続く、入浴の様子が急に変わった場合は、小児科や皮膚科へ相談してください。
身体や頭に触れられるのを極端に嫌がる、不安が睡眠や家庭生活に大きく影響する、他の生活場面でも水や触覚で困る、家庭だけでは負担が大きい場合は、地域の発達相談窓口や児童発達支援へ相談する選択肢もあります。
8.SHIP中央で大切にしていること
私たちは山梨県中央市で、未就学児の個別活動や小集団支援、日常生活につながる支援を行っています。SHIPでは、切り替えや見通し、触れられたときの反応、気持ち・希望の伝え方、着替えや身体を拭く動作、手順の理解などを分けて考えます。
本人ができる部分と援助が必要な部分を整理し、家庭や園で取り入れやすい方法を一緒に考えます。個別活動の考え方もご覧ください。ここで紹介するのは生活面の支援の視点であり、事業所での入浴実施を案内するものではありません。診断や治療は医療機関へご相談ください。
9.よくある質問
Q1.泣いていても、清潔のために入浴させた方がよいですか?
安全と清潔は大切ですが、毎回強引に進めると負担が増す可能性があります。嫌がる工程を整理し、短時間のシャワーなど無理なく行える方法を考えます。病気や皮膚の状態に応じた衛生管理は医療機関へご相談ください。
Q2.シャワーを怖がる場合はどうすればよいですか?
音、水圧、水の方向、予告の有無を確認します。洗面器で流す方法も含め、安心できる条件を探します。
Q3.浴槽へ入らなくても大丈夫ですか?
湯船に入ることだけを成功とせず、安全に身体を清潔にする方法を考えます。健康状態に応じた判断は医療機関へ確認してください。
Q4.玩具や動画を使ってもよいですか?
玩具が安心につながることはありますが、安全確認を妨げない範囲で使います。浴室でのスマートフォンや動画視聴は勧めず、大人も画面に気を取られないようにします。
あわせて読みたい記事
参考情報
- SHIP中央公式ページ
- こども家庭庁「児童発達支援ガイドライン」(令和6年7月)掲載ページ
- こども家庭庁「水まわりの事故」
- こども家庭庁「水の危険は近くにあります、みんなで危険回避!」
- 消費者庁「御家庭内での子どもの溺水事故に御注意ください!」
- 厚生労働省「保育所保育指針・解説」(平成30年度~/こども家庭庁掲載)
情報確認日:2026年9月24日。家庭での工夫は、公的資料の個別性・環境調整の視点を踏まえた実践例で、効果を保証するものではありません。
入浴の悩みを、一緒に整理しませんか
子どもがお風呂を嫌がるときは、入浴全体を「できない」と捉えず、切り替え、音、温度、水、姿勢、触られ方を分けて考えましょう。
まだSHIPを利用するか決めていない段階でも、見学や相談が可能です。ご家庭でのお子さんの様子や、現在負担になっている場面をお聞かせください。

