「車を一列に並べる遊びを、毎日繰り返している」
「別の遊びに誘っても、いつもの遊びに戻ってしまう」
「同じ場面を何度も再現し、大人が変えると怒る」
こんな姿を見ると、「遊びが広がらないのでは」「このまま見守ってよいのか」と心配になることがあります。一方で、好きな遊びにじっくり向かい、自分なりに楽しめている姿でもあります。
保護者A同じ遊びを繰り返すことだけで、問題や診断の有無は判断できません。回数だけでなく、何を楽しみ、どんな条件なら人とのやり取りが生まれるかを見てみましょう。
同じ遊びを繰り返すのはなぜ?
車や積み木を並べる、同じ歌や動きを繰り返す。その背景として、次のようなことが考えられます。どれが当てはまるかは、本人の様子から確かめます。
- 好きな感触、動き、音、並び方を楽しんでいる
- 同じ結果になると分かり、安心して遊べる
- 繰り返す中で、動かし方や違いを確かめている
- 自分なりの完成イメージや順番がある
- 疲れや不安のあるとき、慣れた遊びで落ち着いている
大人には同じに見えても、車の間隔や向きなど、細かな違いを楽しんでいることもあります。「繰り返し遊び=成長していない」と決めず、その子の発見に目を向けてみませんか。
文部科学省の「幼稚園教育要領解説」(平成30年2月)も、安心感を土台に、一人ひとりの興味や経験に合う環境を考えることを示しています。以下は、その考え方を参考にした家庭での工夫です。
1.遊び方より「何を楽しんでいるか」を見る
車を並べる子どもでも、色の組み合わせ、順番、車輪の動き、走る音、完成した形など、好きな部分は違います。少し眺めて、次を確かめてみましょう。
- 何を繰り返しているか
- どの瞬間に笑顔や集中が見られるか
- 大人が近くに来ると、どう反応するか
- 遊びが変わるとき、何が起きるか
- 疲れや不安が強い時間帯ではないか
「車輪を何度も回して見ていた」は観察した事実。「回転が好きそう」は、これから確かめる見方です。理由を一つに決めなくても大丈夫です。



2.すぐに変えず、まず同じ遊びに入ってみる
子どもが車を走らせたら、大人も別の車を走らせる。積み木を並べていたら、邪魔にならない隣の場所で一つ並べてみる。「速いね」「赤い車だね」と、見ていることを短く伝えます。
教える言葉を重ねるより、反応を待つ時間も大切にします。顔を向ける、手を止める、車を寄せるなどの小さな変化に応じてみましょう。目を合わせたり、言葉で答えたりすることは求めません。
近づくと嫌がるときは、距離を取り、見守るところからで構いません。一人で楽しむ時間も尊重します。
3.新しい要素は一つだけ足す
いつもの遊びを残し、本人が気になりそうな変化を一つだけ提案します。
- 車の道のそばにトンネルを一つ置く
- いつもの積み木に、違う色を一つ足す
- 人形に食べ物の玩具を一つ渡す
- 同じ歌に、簡単な動作を一つ添える
- 「橋を通る・いつもの道を走る」から選べるようにする
嫌がったら、すぐ元に戻してよいのです。拒否は失敗ではなく、今はその変化を望んでいないという大切な反応です。次々と足さず、別の日に試す、置く位置を離すなど調整します。



同じ遊びが続くときも、「どんな条件なら一緒に楽しめるか」を整理すると、次の関わりが見つかることがあります。迷う場面は見学・相談時にお聞かせください。
4.好きな遊びの中で、やり取りを作る
必要な車を渡す、二つから選ぶ、大人と一つずつ交代する、完成した列を一緒に見る。子どもの動きを大人がまねすることも、やり取りの始まりになります。
「もう一回」は、声だけでなく、表情や身ぶり、視線、玩具を大人へ渡す動きでも伝えられます。「もう一回だね」と応じてみましょう。言わせるために玩具を取り上げたり、返事が出るまで待たせたりする必要はありません。
こども家庭庁の「児童発達支援ガイドライン」(令和6年7月)でも、言葉に加え、表情や身ぶりなど本人に合った方法で意思をやり取りする支援が示されています。
5.広げることと、終わらせることを分けて考える
新しい経験を提案することと、食事や外出のために遊びを終えることは、別の支援です。終わる必要があるときは、前もって知らせ、「この車を駐車したらおしまい」など最後の行動を具体的に示します。
本人がよければ完成した物を写真に残す、続きをする場所や時間を伝える、片付けの最初だけ一緒に行う工夫もあります。実際に約束できる見通しを伝えましょう。詳しくは切り替えの前後を見る記事をご覧ください。
合う関わりを探す、短い観察メモ
次は架空の記録例です。記録は子どもを評価するためではなく、合う関わりを見つけるためのもの。気付いた日に一場面だけでも十分です。
| 見ること | 記録例 |
|---|---|
| 今している遊び | 車を色ごとに並べる |
| 楽しんでいるように見える部分 | 並び終えた形を眺める |
| 大人が行ったこと | 隣に同じ色の車を一台置いた |
| 子どもの反応 | 大人の車を見て、自分の列に加えた |
| 次に試すこと | トンネルを一つ置いて反応を見る |
相談を考えてよい目安
次のようなときは、自治体の発達相談、かかりつけの小児科、児童発達支援などへ相談できます。
- 遊びの変化による強い混乱が繰り返され、日常生活にも影響している
- 家庭や園で活動に参加しにくい状態が続く
- ことばや人とのやり取りなど、ほかにも気になることがある
- 家庭や園だけでは関わり方を整理しにくい
- 保護者の心配や負担が長く続いている
診断名の見当がついていなくても相談して構いません。うまく遊べている場面も伝えると、本人に合う支えを一緒に考えやすくなります。
よくある質問
同じ遊びを繰り返すだけで、発達障害と判断できますか?
この一つの行動だけでは判断できません。発達の経過や生活全体の様子も含めて確認します。気になる場合は、専門家に相談できます。
同じ遊びはやめさせた方がよいですか?
安全に楽しめている遊びを、繰り返しているという理由だけでやめさせる必要はありません。好きな遊びを尊重し、小さな提案への反応を見ます。
どの段階で相談してよいですか?
関わり方に迷う、心配を誰かと整理したいという段階から相談できます。好きな遊びを続けながら、必要な支えを考えていけます。
SHIP中央では、興味を入口に支援を考えます
山梨県中央市のSHIP中央では、一人ひとりの興味や発達の様子、今できることと必要な助けを確認し、個別活動と小集団での活動を組み合わせています。家庭や園での様子も伺い、生活で生かせる関わりを一緒に考えます。
今回の遊びに当てはめれば、好きな物や楽しみ方を手がかりに、人とのやり取りや新しい経験への入口を探す、という考え方です。活動や関わりは、お子さんの様子に合わせて調整します。



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見学・ご相談について
まだ利用するか決めていない段階でも、見学やご相談が可能です。受給者証をお持ちでない方もご相談いただけます。ご家庭や園でのお子さんの遊び方や、気になっている場面をお聞かせください。
参考資料は2026年9月12日に各省庁の公式掲載版を確認しました。本文の工夫や観察メモは、資料の考え方を参考に整理した例であり、特定のお子さんへの効果を保証するものではありません。

