園で「お友達のおもちゃを取ってしまう」と聞いた。公園でも使いたい物を見ると手が伸び、相手の子が泣いてしまった。「これから友達とうまく関われるのかな」と心配し、相手の子や保護者へ申し訳なく感じることもあると思います。
保護者Aおもちゃを取る行動だけでは、子どもの気持ちや難しさ、性格や診断は判断できません。この記事では、相手の子の安全と遊ぶ権利を守りながら、「伝える・待つ・助けを求める」を支える5つの関わりを紹介します。



おもちゃを取る前に、何が起きていたかを見る
まず、見聞きした事実と、考えられる背景を分けます。「友達が電車を動かしている途中で手を伸ばした」は事実ですが、「一緒に遊びたかった」は、確かめたい可能性の一つです。
- 欲しい気持ちが強く、言葉より先に手が伸びた
- 「貸して」を場面に合わせて使うことが難しい
- 誰が使っているか、次は誰かが分かりにくい
- 待つ時間や終わりが見えない
- 同じおもちゃで一緒に遊びたいが、入り方が分からない
- 大人へ助けを求める方法が分からない
- 疲れや周囲の刺激で、気持ちを整えにくい
- 以前、待っても順番が来なかった経験がある
複数の背景が重なることもあります。一場面だけで理由を決めず、取らずにやり取りできたときとの違いも見てみましょう。
「貸して・待つ」を育てる5つの関わり
1.まず、両方の子どもの安全と遊びを守る
取る、押す、たたくことが起きたら、大人が落ち着いて間に入り、安全を確保します。必要に応じておもちゃを使っていた子へ戻し、遊びを続けられるようにします。
取られた子にも「びっくりしたね。まだ使っていたね」と声をかけます。手を伸ばした子には「今は〇〇ちゃんが使っているよ」「使いたかったね」「次に使えるように一緒に聞いてみよう」と短く伝えます。
背景を理解することと、相手の子に我慢させることは別です。長い説教や厳しい追及をせず、両方の子が安心できる状態を先につくります。
2.何をしたかったのかを具体的に整理する
おもちゃ自体が欲しかったのか、同じ遊びに入りたかったのか、触って確かめたかったのかを見ます。順番が来ると思った、自分が使っていた物を取り返したかった、相手にやめてほしかったという場合も考えられます。
行動の直前を見ると、必要な伝え方も変わります。遊びに入りたいなら「一緒にやろう」、続けて使いたいなら「まだ使う」が合うかもしれません。本人の言葉や指さし、表情も手がかりにします。
3.その場で使える短い伝え方を用意する
「ちゃんと言葉で言って」だけでは、何を言えばよいか分かりにくいことがあります。「貸して」「次、やりたい」「一緒にやろう」「まだ使う」「やめて」「手伝って」から、その場に合う短い言葉を示します。
発話が難しければ、指さし、ジェスチャー、絵カード、大人と一緒に伝える方法も使えます。大人が「この電車を使いたいんだね」と代弁してから、「次、やりたい」と見本を示す関わりも一例です。
復唱できるまで待たせるのではなく、本人の表現に応じてやり取りを支えます。言葉を言わせることだけでなく、相手へ気持ちが伝わる経験を大切にします。
4.順番と待つ時間を見えるようにする
「今は〇〇ちゃん、次はあなた」と示し、順番カードや「次」のカードを添えます。文字だけでは分かりにくければ、写真や実物を使い、大人と意味を確かめます。
- 使っている子とも相談し、「あと1回」「この曲が終わったら」など分かる区切りを示す
- 最初は短く待てる場面を選び、約束した順番が来るよう大人が支える
- 同じ物や似た物を用意し、近くでそれぞれ遊ぶ並行遊びや短い交代から経験する
- 大人が近くにいて、待っている間の遊びや困ったときの伝え方を支える
タイマーが役立つ場合もありますが、時間の意味が分かりにくい子や音が苦手な子もいます。鳴ったら一方的に取り上げる道具にせず、本人たちが分かる合図を探します。
5.落ち着いた場面で、小さな成功を積み重ねる
トラブルの最中だけでなく、大人との穏やかな遊びで「一つ渡して、一つ受け取る」「『次』のカードを見せる」「数秒待って順番が来る」「困ったら大人を呼ぶ」を短く経験します。
できたときは「貸してって伝えられたね」「待っていたら順番が来たね」「取らずに先生を呼べたね」「一緒に使えたね」と、できた行動を伝えます。大きく褒められることが負担なら、静かな声やうなずきでも構いません。
「貸して」と伝えることや順番を待つことについて、どのような支えが合うか分からない場合は、具体的な場面を見学・相談時にお聞かせください。
「貸して」と言っても、貸してもらえないことはある
「貸して」は相手を従わせる言葉ではなく、お願いする方法です。相手にも、まだ使いたい気持ちや、続けて遊ぶ権利があります。



「まだ使う」と返ってきたら、待つ、次の順番を確認する、別のおもちゃを選ぶ、同じ物を探す、一緒に使えるか聞く、大人に助けを求める方法があります。一緒に使うことも、相手がよいときに選びます。
大人は「伝えられたね。今はまだ使いたいんだって。待つ? 別の電車を探す?」と、選びやすい数に絞って支えます。言えたのに借りられなかった経験で終わらず、次にできることまで一緒に考えます。
謝ることより先に確認したいこと
謝罪は関係を修復する大切な方法の一つです。ただ、返すよう言われて怒ったり泣いたりしている最中に、謝る言葉だけを強制しても、次にどうすればよいかを学びにくい場合があります。
- 両方の子どもの安全を確保する
- おもちゃや遊ぶ場所を元に戻す
- 少し離れた静かな場所などで、落ち着くのを助ける
- 何をしたかったかを短く整理する
- 次に使える言葉や方法を一緒に確認する
- 必要に応じて、謝る、返す、壊れた物を直すなどの関係修復を支える
気持ちを受け止めながら、使っていた子へ返すことは大人が支えます。相手の子にもすぐ仲直りや一緒の遊びを求めず、安心して過ごす時間を守ります。
家庭と園で共有したいこと
「また取った」だけで終わらず、次の項目を短く共有してみましょう。
- どのおもちゃで起きやすいか
- 誰と、何人で遊んでいたか
- 取る直前に何があったか
- 何を伝えようとしていたか(分からなければ未確認でよい)
- 使いやすかった言葉やカード
- どのくらいなら待てたか
- うまくやり取りできた場面
- 疲れ、空腹、音、人の多さなどの条件
家庭と園の対応を完全にそろえる必要はありません。「困ったら『手伝って』で大人を呼ぶ」など、共通して使えそうな言葉や手がかりを一つ決めるところから始められます。
相談を検討したい目安
取る・押す・たたくことが繰り返される、本人も友達との関わりでつらそう、言葉や身ぶりで伝えにくい、順番やルールが分からず困っている。こうした様子が続くときは、園、地域の相談窓口、児童発達支援などへ相談できます。
家庭と園で支え方に迷うときや、保護者・先生の負担が大きいときも相談の理由になります。相談することは、診断や通所を決めることと同じではありません。
SHIP中央では、個別活動と小集団の両方から考えます
山梨県中央市の児童発達支援SHIP中央では、個別活動で理解しやすい方法や必要な助けを確認し、小集団で使ってみる行き来を大切にしています。
おもちゃの場面に当てはめると、個別では使いやすい伝え方や手がかりを探し、小集団では友達がいる中で、交代、要求、拒否、助けを求めるやり取りへつなぐことが考えられます。うまくいかないときは、活動内容、人数、大人の位置や伝え方も見直す視点が必要です。
家庭や園での様子も伺い、保護者の同意を得たうえで、必要に応じて園などと情報共有します。具体的な活動は、お子さまの今の様子に合わせて考えます。



まとめ|取る行動の代わりにできることを、一つずつ
子どもがお友達のおもちゃを取るときは、両方の子の安全と遊びを守り、何をしたかったかを確かめます。「貸して」の後に待つ、別の物を選ぶ、大人を頼る方法まで用意し、小さく試していきましょう。
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参考資料
2026年9月11日に公式掲載版を確認しました。子どもの意思の尊重、発達に応じた伝え方、大人が仲立ちする考え方を参考に、家庭や園で試せる例として整理しています。
お友達とのやり取りを、具体的な場面から相談できます
まだ利用を決めていない段階でも、お友達との関わりや園で気になっている様子をご相談いただけます。困った場面だけでなく、少しうまくやり取りできた場面もお聞かせください。

