動画を終わりにすると泣く。公園から帰ろうとすると動けなくなる。片付けを伝えると怒ったり、物を投げたりする。タイマーを見せても、鳴った瞬間に強く嫌がる――。毎日のように続けば、保護者の方が疲れたり、対応に迷ったりするのは自然なことです。
子どもの切り替えにタイマーや予告を使ってもうまくいかないとき、ほかの難しさが重なっている可能性があります。今回は、行動の前後を一場面・3回だけメモし、その子に合う助けを探す方法をご紹介します。
保護者Aタイマーや「あと5分」も試しましたが、鳴ると余計に怒ってしまいます。



タイマーが合わないと決める前に、終わり方や次の予定、疲れなども一緒に見てみましょう。
予告や視覚的な手がかりなどの基本は、切り替えが苦手・かんしゃくが強い子への関わり方で紹介しています。この記事では「試した後、何を見直すか」に焦点を当てます。
「切り替えが苦手」だけでは、必要な支援は分からない
同じように泣いて動けなくても、困っている部分は違うかもしれません。例えば、次の点を分けて考えます。
- 終わりが急だった/「あと5分」の意味がまだ分かりにくい
- 次に何をするか分からない/次の活動が難しい、または不安
- 片付ける量が多い/今の遊びをどこで終えるか分からない
- 園から帰った後の疲れ、空腹、眠気、体調不良がある
- 気持ちや希望を伝える方法が限られている
複数の要因が重なることもあります。「わがまま」「親の対応が悪い」と決めつけず、体調や環境も含めて整理しましょう。
行動の「直前・そのとき・直後」を見る
行動を前後の出来事と合わせて整理することは、専門的にはABC分析と呼ばれる場合があります。ここでは次の三つで考えます。
- 直前:何をしていたか。大人は何を伝えたか。音や場所に変化はあったか。
- そのとき:子どもが実際に何をしたか。何と言ったか。
- 直後:大人はどう応じ、活動や周囲の状況がどう変わったか。
「その後」を見るのは、子どもや保護者を責めるためではなく、次の関わりを考えるためです。一度や3日間の記録だけで、原因や行動の働き、子どもの意図を確定することはできません。診断をする方法でもありません。
家庭でできる「一場面・3日メモ」



一日中記録しなくても大丈夫です。困っている場面を一つだけ選び、短く3回分残してみましょう。
「動画を終えるとき」「公園から帰るとき」など、繰り返し困る場面を一つ選びます。1日1回を目安に、落ち着いてから短く書けば十分です。連続した3日でなくても、書ける日の3回分で構いません。負担なら途中でやめても大丈夫です。
以下は書き方を示す架空の記録例です。実在のお子さんの事例ではありません。
| 見るところ | 記録例 |
|---|---|
| その日の状態 | 園から帰った後。少し眠そうだった |
| 直前 | 予告なしで「動画は終わり」と伝えた |
| 行動 | 5分ほど泣き、床に寝転び「まだ」と言った |
| 直後 | 動画を1本追加した後、自分で終了できた |
| できたこと | 「あと1本」の提案を聞き、最後は自分で消せた |
「かんしゃくを起こした」だけでなく、見た人が同じ場面を想像できる事実を書きます。時間はおおよそでよく、分からない欄は空欄にしましょう。この例は動画の追加を勧めるものではなく、「泣けば要求が通ると計算した」と判断する根拠にもなりません。
記録のために、わざと予告をなくしたり、困る状況を作ったりしないでください。食事・水分・トイレ・休憩・安心できる関わりは、行動の条件として制限しません。
記録から探したいのは「共通点」と「進めた例外」
繰り返している共通点を探す
予告がない日や帰宅直後に強くなりやすい。「全部片付けて」と伝えると止まりやすい。次の活動が分からないときに不安そうになる。こうした重なりを探します。ただし、少ない記録では偶然の可能性もあるため、「関係があるかもしれない」という手がかりにとどめます。
いつもより進みやすかった例外も残す
写真で次の予定を見せると動けた。「あと1回」なら受け入れやすかった。大人と二つだけ片付けると、その後は自分で続けられた。「手伝って」と伝えられた日は泣かずに進めた。困った場面だけでなく、できた場面の違いにも、助けを選ぶヒントがあります。
「タイマーや予告を試しても合う方法が分からない」という場合は、見学時に具体的な場面をお聞かせください。メモが完成していなくても構いません。
記録から考える、切り替えを助ける3つの支援
1.行動が起きる前を分かりやすくする
記録で「時間の説明が伝わりにくそう」と感じたら、「この動画が終わったら」など見える区切りを試します。「全部片付けて」で止まるなら、まず二つだけ。次の活動が分からなそうなら、写真や実物を一つ見せます。
一度に複数の方法を変えず、試す工夫は一つずつにすると振り返りやすくなります。タイマーの音や声かけを強める前に、次の活動の難しさや帰宅後の疲れも見直しましょう。
2.困ったときの代わりの伝え方を用意する
落ち着いているときに、「あと1回」「手伝って」「休みたい」「次は何?」など、使えそうな伝え方を一つ示します。話し言葉が難しければ、写真カードを指す、ジェスチャーを使う方法でも構いません。
伝えられたことは受け止めつつ、可能な範囲を短く返します。例えば「まだ遊びたいんだね。すべり台をあと1回で帰ろう」。延長できない日は「まだ遊びたかったね。今日は帰る時間。手をつないで行こう」と伝えます。すべての要求を受け入れるという意味ではありません。
3.小さくできた部分を具体的に伝える
泣きながらでもリモコンを置けた。一つ片付けられた。「まだ」と言葉にできた。休んだ後に活動へ戻れた。その部分を見つけ、「リモコンを置けたね」「手伝って、と伝えられたね」と短く返します。
「えらいね」だけより、何ができたかが伝わります。大きく褒められることが負担になる子には、静かな声やうなずき、笑顔でもよいでしょう。
変化は「泣かなかったか」だけで見ない
- 切り替えまでの時間が少し短くなった
- 大人の手助けが少なくなった
- 希望や困りごとを伝えられた
- 泣いた後に戻るまでの時間が短くなった
- 家庭と園で同じ方法を使えた
こうした変化も大切です。うまくいかないときは、子どもの努力不足ではなく、難しさ、タイミング、言葉の量、環境を見直す手がかりと考えます。3日メモは合否をつけるものではなく、相談や調整を始めるためのメモです。
危険があるときは記録より安全を優先する
道路への飛び出し、自分や周囲を強く傷つける行動、激しく物を投げる状態があるときは、安全な場所の確保、危険物を離すこと、周囲への支援要請を優先します。長い説明や記録は後にしましょう。差し迫った危険や重いけががあれば、緊急の援助を求めてください。
危険な行動が続く、急に様子が大きく変わった、痛みや体調不良が疑われる、睡眠や食事に大きく影響している場合は、支援機関や医療機関へ相談してください。保護者や園の負担が非常に大きいときも、家庭だけで抱える必要はありません。記録がそろうまで相談を待たなくて大丈夫です。
SHIP中央では、家庭や園での様子を一緒に整理します
SHIP中央は、山梨県中央市にある未就学児のための児童発達支援事業所です。一人ひとりの実態、得意なこと、どのような助けがあると取り組めるかを確認し、個別活動と少人数での集団活動を組み合わせています。
家庭や園での様子も伺いながら支援を考え、保護者の同意のもと、必要に応じて園などと情報を共有します。



できなかったことだけでなく、どのような助けがあると進めたのかを見ることが、次の支援を考える出発点です。
タイマーで切り替えられないときは、一場面から
子どもの切り替えにタイマーを使っても難しいときは、行動の直前・そのとき・直後に目を向けてみましょう。一場面の3日メモから、共通点と進めた例外を探し、無理なく試せる助けを一つ選びます。理由を急いで決めず、親子の負担も含めて一緒に考えることが大切です。
見学・相談のご案内
まだ利用を決めていない段階でも、お子さんの切り替えや家庭・園で気になっていることをご相談いただけます。うまくいかなかった方法だけでなく、少し進みやすかった場面もお聞かせください。
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参考資料
行動を具体的に整理する考え方と、本人・家族に合わせる支援について、以下を参照しました。「一場面・3日メモ」は家庭の負担を抑えるための本記事の提案で、診断や効果を検証したプログラムではありません。
- こども家庭庁「児童発達支援ガイドライン」(本人支援・家族支援)
- 発達障害ナビポータル「子どもの発達を支える効果的な対応」(講義2・行動理解)

