「ゲームに負けた途端、駒を投げてしまう」
「負けそうになると、途中でルールを変えようとする」
「じゃんけんで負けただけでも、しばらく泣き続ける」
遊びを楽しみにする姿や、勝ちたいと一生懸命になる姿は大切にしたいものです。一方で、「いつも勝たせるべきか」「負けても我慢するよう厳しく教えるべきか」と迷うこともあると思います。
保護者A私たちが目指したいのは、悔しさを感じなくすることではありません。気持ちを安全な方法で表し、休憩する、助けを求める、次の行動を選ぶことを支えていきます。ここからは、SHIPから提案する「家庭で試せる一例」です。
負けたときに泣く・怒る背景は一つではありません
子どもが負けると怒る姿だけで、「わがまま」「我慢が足りない」とは判断できません。この行動だけから、発達障害や感情調整の問題を判断することもできません。
- 勝つと思っていた結果と違い、驚いた
- 負ける可能性や、ルール・終わり方が分かりにくかった
- 悔しさを表す言葉や方法がまだ少ない
- 負けた姿を見られるのがつらい
- 疲れ、空腹、騒がしさが重なっていた
- 「負ける=自分ができない」と感じた、以前の嫌な経験を思い出した
いずれも確かめたい可能性です。同じ子でも、遊びの種類、相手、時間帯、人数によって反応は変わります。勝てる遊びにしか入りたがらないときも、参加できた場面との違いを探します。



1.「怒った」だけでなく、その前後を見る
まずは一場面を短く振り返りましょう。どの遊びを、誰と何人でしていたか。ルールは伝わっていたか。負ける前の様子、大人の声かけ、落ち着くまでのおおよその時間、役立った助けをメモします。
「駒を握り、ルールを変えたいと言った」は観察した事実。「結果が予想外だった」は考えられる背景です。「わざと負けを認めない」と決めず、結果への戸惑いとルールの分かりにくさを分けて考えます。落ち着いてから本人の言葉や指さしも確かめましょう。
2.興奮しているときは、教えるより安全と落ち着きを優先する
叩く・投げることが起きたら、周囲の子と距離を取り、危険な物やゲームの部品を静かに離します。「投げるのは止めるよ」「悔しかったね」と短く伝え、静かな場所で休む選択肢を示します。
説明、説教、反省や謝罪の要求を重ねず、話すことを求めないで待ちます。近くにいる方が安心するか、少し距離がある方がよいかも見てください。危険な行動を止めることと、悔しい気持ちを否定することは別です。



3.遊びの難しさと長さを調整する
- 1回が短いゲームにし、始める前に回数と終わりを決める
- 順番をカードなどで見えるようにする
- 勝つ人と負ける人がいることを、短い実演で確かめる
- 勝敗が中心ではない協力ゲームも取り入れる
- 大人が「悔しいな。少し休もう」と自然に見本を見せる
- 参加するか見学するかを、本人が選べるようにする
毎回勝たせることにも、何度も負けさせて慣らすことにも偏らず、安心して参加できる条件を探します。ルールの変更は遊ぶ前にみんなで確認し、相手の子の楽しさも守りましょう。
家庭で何度伝えてもうまくいかないときは、子どもや保護者の努力不足ではなく、ゲームの難しさや伝え方が合っていないこともあります。気になる場面を整理するところから、見学・相談をご利用いただけます。
4.負けたときに使える行動を、先に用意する
遊ぶ前に「悔しい」「もう一回」「休む」「今日はおしまい」「手伝って」など、その場で使える方法を示します。一度に全部教えず、まず「休む・続ける」の二つから選ぶ方法もあります。
言葉で伝えにくければ、絵や身ぶり、選択カードでも構いません。「もう一回」は相手にも都合があるため、できないときの選択肢も用意します。
深呼吸、水分補給、静かな場所で過ごすなど、普段落ち着きやすい方法を一緒に探します。深呼吸を全員の正解にせず、嫌がる方法は求めません。休憩や水分を「泣きやんだら」のご褒美にしないことも大切です。
5.落ち着いた後は「立て直せた部分」を振り返る
「負けても泣かなかったから偉い」だけでなく、気持ちを表し、立て直した過程を具体的に伝えます。
- 投げる前に「休む」と伝えられた
- 泣いた後に自分で戻ってこられた
- 駒を一つ片付けられた、次のゲームを見学できた
- 「悔しかった」と伝えられた、大人と終わりの挨拶ができた
「休むって教えてくれたね」と短く伝えるだけでも十分です。戻らずに終える選択も尊重します。必要な片付けや相手への声かけは、落ち着いてから大人と一緒に考えます。



ゲームの前後で使える4段階の表
| 段階 | 大人ができること |
|---|---|
| 始める前 | ルール、回数、終わりを短く確認する |
| 遊んでいる途中 | 勝敗だけでなく、待つ・伝える・参加する姿を見る |
| 気持ちが崩れたとき | 安全を確保し、短い言葉と休める場所を用意する |
| 落ち着いた後 | 立て直せた行動を短く振り返る |
全員に同じ順番を強制する手順ではなく、本人に合う支援を考えるための一例です。
よくある質問
毎回、子どもを勝たせた方がよいですか?
遊び方を学ぶ初期に、参加しやすい条件をつくることはあります。ただし、毎回結果を操作するのではなく、短いゲームや協力ゲームを選び、安心して勝敗を経験できる条件を整えましょう。
負けることに慣れさせるため、わざと負けさせてもよいですか?
強い負担が続く方法は勧めません。本人が参加できる範囲で、長さや人数を調整し、小さな経験を積みます。つらそうなら休む・終えることも選べます。
どの段階で相談してよいですか?
勝敗のある活動にほとんど参加できない、投げる・叩く危険が繰り返される、友達関係や日常生活に影響している。こうした状態が続くときは、園、自治体の発達相談、児童発達支援などへ相談できます。家庭や園で関わりを整理しにくいとき、保護者や先生の負担が続くときも相談の理由になります。
SHIP中央では、個別活動と小集団から考えます
山梨県中央市のSHIP中央では、個別活動で分かりやすい方法や必要な助けを確認し、小集団で使ってみる行き来を大切にしています。家庭や園の様子も伺い、一人ひとりに合う支援を考えます。
ゲームの場面なら、ルールの理解や使いやすい伝え方を確認し、順番、勝ち負け、休憩、助けを求める経験をどう組み立てるか考えられます。人数・時間・ルールの調整も含め、具体的な活動は本人の状態に合わせて相談します。支援の概要はSHIP中央の施設案内をご覧ください。
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参考資料
2026年9月13日に公式掲載版を確認。見通しと振り返り、安心して気持ちを表す環境、本人に合う支援の考え方を参考にしました。上記の5つの工夫を一式で効果検証した研究を示すものではありません。
- 文部科学省「幼稚園教育要領」(平成29年告示):第1章第4の3・4。同解説(平成30年2月):第1章第4節
- 「保育所保育指針」(平成29年告示)・同解説(平成30年2月、こども家庭庁掲載):情緒の安定、人間関係
- こども家庭庁「児童発達支援ガイドライン」(令和6年7月):第2章・第3章
気になっている場面を、そのままお聞かせください
まだ利用するか決めていない段階でも、見学やご相談が可能です。ゲームや集団活動で困っている具体的な場面を、そのままお聞かせください。

