友達と笑い合い、遊びに夢中になれる。これは、人と関わろうとする気持ちや、遊びを楽しめる力が育っている姿です。
一方で、楽しくなるほど声が大きくなり、走る速さや身体の動きが激しくなったり、友達に触れる力が強くなったりする子もいます。
「声を小さくして」
「優しくして」
「走らないよ」
その場では直せても、少しすると元に戻る。何度も続くと、大人も「分かっているはずなのに、どうしてだろう」と悩みます。
けれども、戻ってしまうことは、わざと注意を無視しているという意味とは限りません。この記事では、SHIPでの実践と公的資料・研究を踏まえ、注意だけで変わりにくいときの3つの関わりを紹介します。
ゆうた先生「分かっているのに戻る」のではなく、楽しい遊びの中で調整を続けることに、まだ大人の手助けが必要なのかもしれません。
楽しくなると、なぜ声や動きが大きくなるのでしょうか
声の大きさを確かめる、身体を止める、友達との距離を見る、相手の表情に気づく、遊びのルールを思い出す。友達と遊びながら、子どもは実はいくつものことを同時に行っています。
自分の気持ちや行動を場面に合わせて整える力を「自己調整」といいます。この力は未就学期にも大きく育ちますが、まだ発達の途中です。楽しい気持ちが高まる場面では、遊びを続けながら声・動き・力加減を整えることが、一部の子どもには難しくなることがあります。
ただし、興奮すれば誰でも調整できなくなるわけではありません。疲れや空腹、人の多さ、音や物の多さ、遊びの内容、言葉の理解、身体の感覚など、背景は一人ひとり異なります。この姿だけで、発達障害などを判断することもできません。
子どもが一人で整えきれないときに、大人が関係や環境、見本を通して一緒に整えることを「共同調整」と呼びます。こども家庭庁の「児童発達支援ガイドライン」でも、自分の行動の特徴を理解し、自己を肯定的に捉えられる機会を通じて、気持ちや情動を調整できるよう支援することが示されています。
友達との遊びで育つ力については、「友達との関わりが苦手な子へ」でも紹介しています。
注意を繰り返すだけでは変わりにくい理由
注意を受けた直後に声や動きを小さくできるなら、言葉の意味をある程度分かっている可能性があります。それでも戻るのは、分かった行動を楽しい遊びの中で保ち続けることが、まだ難しいからかもしれません。
また、「優しく」「静かに」「ちゃんと」は、程度が見えにくい言葉です。子どもは「どのくらいの声?」「手をどう動かすの?」と迷っていることがあります。
行動が大きくなってから同じ注意を重ねるより、始まる前や、まだ話を受け取りやすい段階で成功しやすい条件を作る方がよい場合があります。例えば、次のような先回りです。
- 遊ぶ前に「友達の近くは歩く」など、約束を一つだけ確認する
- 声や力の目安を見せ、一度試してから遊びを始める
- 人数、玩具の量、遊ぶ範囲を調整する
- 大きくなる前のサインが見えたら、役割交代や水分など短い区切りを入れる
- 家庭と園で、うまくいった伝え方を共有する
これを「起きた後の注意」だけでなく、「起きる前を整える支援」と考えます。
関わり方① 注意する前に、できていることを具体的に認める
ここでいう「認める」は、機嫌を取るために何でも褒めることではありません。実際に見られた行動や努力を、短く具体的に伝えることです。
- 「順番が来るまで待てたね」
- 「『一緒にやろう』って声をかけられたね」
- 「さっきは、そっと渡せていたね」
- 「遊びに入ろうとしていたね」
このうち、望ましい行動を具体的に示し、肯定的に伝える方法は、研究では「行動特定的な称賛」と呼ばれます。「えらいね」だけでなく具体的に伝えることで、何が認められたのかを示せます。
タイミングは、望ましい行動をしている最中か、その直後が基本です。危険な行動の直後に、無関係なことを急に褒めるのではありません。まず安全を確保し、子どもが見本を受け取りやすい状態になってから、安全なやり方を示します。それを試せたときに「今の力で渡せたね」と伝えます。
大人の注目が、その直前の行動を増やす方向に働く子もいます。ただし、注目がすべての子に同じように働くわけではなく、行動の理由も一つではありません。称賛だけで落ち着くとは限らず、大きく褒められることが苦手な子には、静かな声、うなずき、笑顔などが合う場合もあります。
SHIPの実践では、できていた行動や努力を先に伝えると、その後の修正を受け取りやすくなる姿がありました。「分かってもらえた」という安心感が生まれた可能性はありますが、「褒めることで心のリソースが回復した」とまでは確認できません。何がよかったかが明確になったこと、一度に伝える内容が整理されたこと、やり取りの間に興奮が少し下がったことなど、別の説明も考えられます。これは効果を保証する方法ではなく、子どもの反応を見ながら試す一つの関わりです。
具体的な認め方については、「子どもをほめることには、どんな意味がある?」でも詳しく紹介しています。



まずは「今できていること」を一つ見つけ、そのあとに「次にすること」を一つだけ伝えてみましょう。
関わり方② 抽象的な注意ではなく、見本を実際に見せる
「優しくして」と伝えても程度が分かりにくそうなときは、大人が同じボールを使い、「このくらい」と転がして見せます。「声を小さくして」なら、大人がその場に合う声で一言話し、子どもにも同じ大きさで言ってもらいます。
進め方は、次のように短くします。
- 名前を呼び、見本に注意を向ける
- 「友達の近くは、この速さ」のように一つだけ伝える
- 大人が実演する
- 子どもにも一度試してもらう
- できた部分を伝え、遊びへ戻る
声の大きさは、「1=小さな声」「2=近くの人と話す声」「3=外で使う声」など、絵や指で段階を示す方法もあります。区分は家庭や園でそろえ、子どもに合う数に調整します。
実演や視覚的な手がかりは、特に言葉だけでは程度をイメージしにくい子の助けになることがあります。ただし、この領域の研究は自閉スペクトラム症や発達障害のある子どもを対象としたものが多く、すべての未就学児に同じ効果があるとはいえません。子どもの反応を見ながら調整します。興奮がかなり高まっているときは、練習を増やすより、刺激を減らして落ち着ける場所へ移る方が先です。



「静かに」ではなく、実際の声や動きを見せると、子どもがまねできる具体的な目標になります。
見本や手助けの量を調整する考え方は、「できない」のではなく、支援の段階が合っていないことがありますも参考にしてください。
関わり方③ できている部分と、直す部分を分けて伝える
遊び全体を「ダメ」とすると、子どもは何を残し、何を変えればよいか分かりにくくなります。
伝える順番は、次の3つです。
- 実際によかったこと
- 今変えることを一つ
- 次にする具体的な行動
例えば、次のように伝えます。
- 「一緒に笑って遊べているね。次は、友達の近くでは歩こう」
- 「ボールを相手に渡せたね。次は、この線まで届く力で転がそう」
- 「順番を待てたね。次は、名前を呼んで返事を待とう」
- 「途中までは小さな声で話せていたね。今は『2の声』で続けよう」
「声、足、手、順番を全部直して」と一度に伝えず、その場で最も大切な一つに絞ります。この順番なら必ず受け入れやすくなると証明されているわけではありませんが、肯定的な情報と具体的な修正を分けることで、次の行動が分かりやすくなることがあります。
家庭や園で使える言葉かけ Before/After
次のAfterは、危険がなく、子どもが言葉や見本を受け取りやすい段階で使う例です。できていないことを、できたこととして褒める必要はありません。
| Before | After |
|---|---|
| 「うるさいよ。静かにして」 | 「楽しそうだね。ここでは『2の声』。聞いてみて、このくらいだよ」 |
| 「強くしないで」 | 「ボールを渡せたね。次は、このくらいの力で転がしてみよう」 |
| 「走らないよ」 | 「ここまではゆっくり来られたね。友達の近くでは歩こう」 |
| 「ちゃんと遊んで」 | 「一緒に遊べているね。次は、友達が使い終わるまで待ってみよう」 |
言い換えだけでなく、見本を見せ、子どもが試し、できた直後に具体的に伝えるところまでを一つの流れにします。
安全確保を最優先にする場面
叩く、強く押す、物を投げる、道路へ飛び出すなど、本人や周囲にけがの危険があるときは、称賛を先に入れる必要はありません。
「止まろう」
「手を離そう」
「こちらへ移ろう」
と短く明確に伝え、子ども同士の距離を取る、危険な物を外す、大人が間に入るなど、まず安全を確保します。長い説明や振り返りは、落ち着いてから行います。
その後で、何が起きたかを責めずに整理し、「次はボールを置いて『休む』と伝えよう」など、代わりの行動を一つ練習します。施設では安全管理マニュアルと職員間の役割分担に沿って対応することが必要です。
相談を考えてもよい目安
次のような場合は、家庭だけで抱えず、園、市町村の相談窓口、かかりつけ医、児童発達支援などへ相談してもよいでしょう。
- 家庭や園など複数の場所で頻繁に続いている
- 本人や友達のけがにつながることがある
- 友達との遊びが続かず、本人も困っている
- 環境や伝え方を変えても、困りごとが強く続く
- 家庭や園の負担が大きくなっている
- 急に様子が変わった、睡眠や体調にも心配がある
相談するときは、「大きくなった行動」だけでなく、その前に何があったか、どの場面ではうまくいったか、どんな見本や声かけが役立ったかを共有すると、支援を考えやすくなります。
相談先を決めることに迷う場合は、「児童発達支援に相談するか迷っている保護者へ」もご覧ください。
SHIP中央で、関わり方を一緒に整理できます
児童発達支援SHIP中央では、未就学のお子さまを対象に、ことば・コミュニケーション、集団参加、切り替え、生活面、就学前の準備など、一人ひとりの発達段階に合わせた支援を行っています。
楽しくなると声や動きが大きくなるときも、注意の回数だけを増やすのではなく、どの場面で高まりやすいか、どのような見本なら分かるか、どこまで自分で調整できているかを一緒に整理します。家庭や園で使いやすい方法につなげていくことも大切にしています。
利用するか決めていない方や、受給者証をまだお持ちでない方も、見学・個別相談が可能です。
児童発達支援SHIP中央
〒409-3843 山梨県中央市西花輪3637-15
空き状況、利用条件、送迎の可否や範囲は変わることがあるため、最新情報は公式ページまたは見学・相談時にご確認ください。
あわせて読みたい関連記事
お子さまの様子や、今知りたいことに合わせてご覧ください。
- 友達との関わりが苦手な子へ|遊びの中で育つ力と支援の考え方
- 子どもをほめることには、どんな意味がある?|具体的な認め方
- 「できない」のではなく、支援の段階が合っていないことがあります
- 児童発達支援に相談するか迷っている保護者へ



どの記事から読めばよいか迷うときは、今いちばん気になる場面に近いものからで大丈夫です。
参考資料・出典
- こども家庭庁「児童発達支援ガイドライン」(令和6年7月)
- こども家庭庁「幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョン(はじめの100か月の育ちビジョン)」
- こども家庭庁「障害児支援における安全管理について」
- 国立特別支援教育総合研究所「声のものさし」
- Wesarg-Menzel et al. (2023), Development and socialization of self-regulation from infancy to adolescence: A meta-review differentiating between self-regulatory abilities, goals, and motivation
- Dunlap et al. (2018), A Randomized Controlled Evaluation of Prevent-Teach-Reinforce for Young Children
- Ennis et al. (2020), Behavior-Specific Praise in Pre-K–12 Settings: Mapping the 50-Year Knowledge Base
- Senn et al. (2020), An evaluation of praise as a reinforcer for preschoolers’ behavior
- Ennis et al. (2017), A Systematic Review of Precorrection in PK–12 Settings
- Sutherland et al. (2018), Reducing child problem behaviors and improving teacher-child interactions and relationships: A randomized controlled trial of BEST in CLASS
- Hume et al. (2021), Evidence-Based Practices for Children, Youth, and Young Adults with Autism: Third Generation Review
- Rothenberg et al. (2024), Universal Teacher-Child Interaction Training in early childhood special education: Identifying mechanisms of action that explain why it works
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断や支援方針を決めるものではありません。安全や発達、体調について心配がある場合は、関係機関や専門職へご相談ください。









