歯ブラシを見ると逃げてしまう。口を開けてくれず、泣いたり、手で払いのけたりする。毎晩、押さえながら仕上げ磨きをすることになり、親子ともにつらく感じていませんか。
それでも「自分で歯ブラシを持てる」「好きな色なら手を伸ばす」など、受け入れられる場面が見つかることもあります。まずは、その小さな一歩も大切にしてみましょう。
保護者A


歯みがきを嫌がる理由は一つではありません。親の努力不足や、子どものわがままと決めつけず、必要な口腔ケアを続けやすくする方法を考えます。
歯みがきを嫌がるのには、さまざまな理由があります
- 歯や歯ぐき、口の中に痛みや違和感がある
- 歯ブラシが硬い・大きい、口に当たる感触が苦手
- 歯みがき粉の味・香り・泡が苦手
- 仰向けの姿勢や明るい照明が不安
- 何をされるのか、いつ終わるのか分からない
- 長時間じっとすることが難しい
- 過去の苦しかった経験を思い出す
- 疲れている時間帯と重なっている
複数の理由が重なっている可能性もあります。歯みがきが苦手という様子だけで、発達障害や感覚処理の問題を判断することはできません。以下は原因を診断する方法ではなく、家庭で様子を整理するための工夫です。



1.最初に、痛みや口の中の異変がないか確認する
急に強く嫌がるようになったときは、慣れの問題と考える前に、痛みや傷がないかを確認しましょう。出血、腫れ、食べにくさがある場合も、小児歯科などへ相談してください。無理に口をこじ開けて調べる必要はありません。
日本小児歯科学会は、磨く力が強すぎたり、上唇の内側のすじに歯ブラシが当たったりすると、痛くて嫌がる場合があると説明しています。道具だけでなく、当て方も歯科で相談できます。【出典1】
児童発達支援では、むし歯などの歯科疾患を判断・治療することはできません。口の健康の確認は、歯科医療機関の役割です。
2.「どの場面から嫌がるか」を細かく見る
「歯みがきができない」と一括りにせず、行動を分けてみます。
- 洗面所へ行く → 歯ブラシを見る → 歯ブラシを持つ
- 顔や唇に触れられる → 口を開ける
- 歯ブラシが歯に触れる → 数本磨く → 口をすすぐ
例えば「歯ブラシは持てるけれど、唇に触れると顔をそむける」と分かれば、触れ方や痛みを確認する手掛かりになります。「口に触れるのが怖いのかも」という解釈と、実際に見た様子は分けておきます。
時間帯、使った道具、受け入れられたところを一言メモする程度で十分です。口をすすぐことは、年齢や発達、歯みがき粉の使用方法に応じて歯科で確認し、全員に同じ到達点を求めません。
3.手順と終わりを分かりやすくする
「何をするか」と「いつ終わるか」が伝わると、取り組みやすくなる場合があります。
- 写真やイラストで「歯ブラシを持つ・磨く・片付ける」を示す
- 「上の歯、下の歯で終わり」など短く具体的に伝える
- 短い歌や一定の数を、区切りの合図にする
- 指示は一つずつ伝え、急かす言葉を重ねない
歌や数は見通しのための合図で、必要な清掃ができたかを決める基準ではありません。歯科で教わったケアに合わせて区切りを作ります。タイマーの音や残り時間が負担になる子もいるため、合わなければカードや言葉に変えてみましょう。
生活場面でどこから手伝えばよいか迷うときは、SHIP中央の支援内容もご覧ください。見学では、着替えや手洗いなど、ご家庭で気になっている様子をお聞かせいただけます。
4.道具・姿勢・順番に小さな選択肢を作る
「磨く・磨かない」ではなく、安全に取り組める範囲で選べるようにします。
- 口に合う大きさ・硬さを確認した2本の歯ブラシから選ぶ
- 上の歯と下の歯のどちらから始めるか選ぶ
- 仕上げ磨きは、座る・立つなど、その子の年齢や身体の安定に合う姿勢を歯科で相談する
- 歯みがき粉の味や泡が苦手なら、製品や使用方法を歯科医師・歯科衛生士に相談する
姿勢は好みだけで決めず、大人が口の中を見やすく、安全に頭を支えられることが大切です。【出典1】 自分で磨く幼い子は、大人がそばで見守り、床に座って行います。歯ブラシを持ったまま・くわえたまま歩かせないようにしましょう。【出典2】
フッ化物配合歯みがき粉には年齢に応じた推奨があります。味が苦手な場合も自己判断でケアを省かず、使用量や濃度、すすぎ方を含め、その子に合う方法を歯科で確認してください。【出典3】
5.受け入れられる小さな段階から経験を積む
痛みや安全面を確認したうえで、受け入れやすい段階を探します。順番どおりに進める必要はなく、つらそうなときは一つ前の段階に戻って構いません。
| 段階 | 取り組みの例 |
|---|---|
| 1 | 歯ブラシを見る |
| 2 | 自分で歯ブラシを持つ |
| 3 | 頬や唇に軽く触れる |
| 4 | 短い時間だけ口を開ける |
| 5 | 数本だけ磨く |
| 6 | 受け入れられる範囲を少しずつ広げる |
この段階表は、必要な口腔ケアの代わりではありません。受け入れやすい方法を探す考え方です。数本磨けたら残りを磨かなくてよい、という意味ではなく、十分に磨けない場合の対応は小児歯科に相談しましょう。
「今日は口を開けられたね」「歯ブラシを持てたね」と、途中の行動も具体的に認めます。疲れが強くなる前の時間帯に変えるなど、親子が取り組みやすい条件を一つずつ試してみてください。
無理に押さえ続ける前に相談を
毎日のように強く押さえる対応が続くと、親子双方の負担が大きくなる可能性があります。これまで歯を守ろうと頑張ってきた保護者の方を責める必要はありません。
ただし、「嫌がるなら磨かなくてよい」ということではありません。家庭だけで続けるのが難しいときは、小児歯科へ今の状況を伝え、安全な仕上げ磨きや必要な口腔ケアについて助言を受けましょう。
歯科・医療機関へ相談する目安
- 歯や口の中を痛がる、出血・腫れ・傷がある
- 食事や水分摂取にも影響している
- 歯の色や形に、むし歯かもしれないと気になる変化がある
- 急に強く嫌がるようになった
- 家庭で必要な口腔ケアを続けることが難しい
これらは病名を判断するチェックリストではありません。いつから、どの場面で困るかを伝えて相談してください。日本小児歯科学会も、一人ひとりに合う磨き方を身につけるうえで、歯科での定期的な確認を大切にしています。【出典4】 水分が取れないなど体調にも影響がある場合は、早めに小児科など医療機関へ連絡してください。
生活場面の支え方を、SHIP中央で一緒に考えませんか



SHIP中央は、山梨県中央市にある未就学児を対象とした児童発達支援事業所です。個別活動や少人数での活動、日常生活の支援を通じ、得意なことと、助けがあると取り組みやすいことを整理しています。
見通しの伝え方、道具や姿勢、声かけなど、その子に合う支え方を保護者の方と一緒に考えます。歯みがきだけでなく、着替えや手洗いなど、生活場面での関わりに迷う場合は、見学時に具体的な様子をお聞かせください。
SHIPの役割は生活や発達の支援です。歯科治療、口腔機能訓練、むし歯予防の専門指導は、歯科医療機関へご相談ください。
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参考にした公的・専門情報
- 出典1:日本小児歯科学会「産まれてから2歳頃まで」
- 出典2:消費者庁「子どもの歯磨き中の喉突き事故に注意しましょう!」
- 出典3:4学会合同「フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法」(2023年)
- 出典4:日本小児歯科学会「3歳ごろから就学前まで」
情報確認日:2026年9月12日。家庭での工夫は一例です。お口の状態に合うケアは、歯科医師・歯科衛生士にご確認ください。
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