好きな遊びの名前を言う、欲しい物を指差す、楽しいときに笑顔を向ける。そうした姿も、大切なコミュニケーションです。
「今日、園で何した?」
お子さんが園から帰ってきたとき、そんなふうに尋ねることがあると思います。
ところが、返ってくるのは、
「分からない」
「何もしてない」
「忘れた」
という答えだったり、質問とは関係のない話だったりすることがあります。
何度聞いても答えてくれないと、「話を聞いていないのかな」「園でのことを話したくないのかな」と心配になる保護者の方もいるかもしれません。
しかし、「今日、園で何をしたか答える」ということは、子どもにとって意外と複雑なやり取りです。
質問に答えられないことを、すぐに「話す気がない」「ことばを分かっていない」と判断するのではなく、どの部分で難しくなっているのかを分けて考えることが大切です。
※以下の吹き出しは一般的な会話例です。実際の利用者の発言ではありません。
保護者「今日、園で何した?」は難しい質問です
大人にとっては自然な質問ですが、答えるためにはいくつもの力が必要です。
子どもはまず、「今日」「園で」「何をした」という質問の意味を理解する必要があります。
そのうえで、一日の出来事を思い出し、どの出来事を選ぶか決め、それを相手に伝わる順番に並べ、ことばにしなければなりません。
つまり、この質問には、
- 質問に注意を向ける
- 質問の意味を理解する
- 園での出来事を思い出す
- 話す内容を一つ選ぶ
- 出来事をことばにする
- 相手に伝わるように話す
といった複数の力が含まれています。
質問に答えられないからといって、園で何もしていなかったわけでも、話したくないと決まったわけでもありません。
質問に答えにくい背景は一人ひとり違います
質問の範囲が広すぎる
「何をした?」という質問には、正解の候補がたくさんあります。
外で遊んだこと、給食を食べたこと、制作をしたこと、友達と話したことなど、たくさんの出来事から一つを選ぶ必要があります。
何を答えればよいか分からず、「分からない」と答えることがあります。
「今日」「昨日」などの時間が分かりにくい
今起きていることなら話せても、少し前の出来事を思い出して話すことは難しい場合があります。
また、「今日」「昨日」「さっき」といった時間を表すことばの理解が、まだ育っている途中の場合もあります。
出来事を思い出す手がかりが少ない
質問だけを聞いて、一日の出来事を思い出すことが難しい場合があります。
園で作った物、給食の献立、写真、持ち帰った物などを見ると、思い出しやすくなることがあります。
思い出していても、ことばにまとめにくい
出来事自体は覚えていても、誰と、どこで、何をしたのかを順番に整理して話すことが難しい場合があります。
単語、指差し、身ぶりなどでは伝えられていても、文章にするところで止まっていることもあります。
疲れていて会話へ注意を向けにくい
園で一日を過ごした後は、子どもも疲れています。
帰宅直後に質問されると、質問を聞いて考える余裕がなく、「分からない」「忘れた」と答えることがあります。
どのような質問なら答えやすいかを見てみましょう
| 質問する場面 | 子どもの様子 | 確認するポイント |
|---|---|---|
| 「今日、何した?」と聞く | 黙る、分からないと答える | 質問の範囲が広すぎないか |
| 「外で遊んだ?」と聞く | うなずく、答えられる | はい・いいえの形なら答えやすいか |
| 写真や制作物を見せる | 出来事を話し始める | 視覚的な手がかりが役立つか |
| 帰宅直後に聞く | 答えない、怒る | 疲れや切り替えの難しさがないか |
| 時間を置いて聞く | 少し話せる | 質問するタイミングが合っているか |
| 「誰と?」と追加で聞く | 答えが止まる | 一度に複数の情報を求めていないか |
子どもを試すためではなく、その子にとって分かりやすい質問や手がかりを見つけるために観察します。
SHIPスタッフ質問に答えやすくする5つの工夫
1.質問の範囲を小さくする
「今日、園で何した?」という広い質問を、もう少し具体的にします。
例えば、
「今日は外で遊んだ?」
「お部屋では何を作った?」
「給食はカレーだった?」(献立で確認できている場合)
など、場面を絞って尋ねます。
「遊んだ?」「食べた?」など、はい・いいえで答えられる質問から始めても構いません。
本人が話したそうなら、「何して遊んだ?」と一つだけ質問を広げます。うなずきだけで終わっても構いません。
2.二つの選択肢から選べるようにする
自分でことばを考えることが難しい場合は、選択肢を示します。
「外で遊んだ?お部屋で遊んだ?」
「ブロック?お絵描き?」
「楽しかった?ちょっと嫌だった?」
選択肢は多くしすぎず、二つ程度にします。両方当てはまる場合は「どっちも」、思い出せない場合は「分からない」、今は話したくない場合は「今は話さない」と伝えられる余地も残します。
ただし、大人が考えた選択肢の中に答えがないこともあります。「どっちでもない」と伝えられる選択肢も残しておきましょう。
3.写真や持ち帰った物を手がかりにする
園で作った物、連絡帳、給食の献立、写真などを一緒に見ながら聞くと、出来事を思い出しやすくなることがあります。
「これを作ったんだね」
「赤いところを描いたの?」
「誰と作ったのかな?」
と、目の前にある物から会話を始めます。
何もないところから一日を思い出させるより、具体的な手がかりがある方が話しやすい子もいます。
4.答えを急がず、ことば以外の伝え方も受け止める
質問した後、大人がすぐに次の質問を重ねると、考えている途中でも会話が進んでしまいます。
少し待ち、表情、指差し、身ぶり、絵なども答えとして受け止めましょう。
「ブロック」と一語で答えた場合も、
「ブロックで遊んだんだね」
と、ことばを少し補って受け止めます。
最初から詳しい文章で話すことを求める必要はありません。
ゆうた先生5.正しく答えることより、やり取りを楽しむ
答えが園から聞いていた内容と違っていても、すぐに訂正したり問い詰めたりしないようにします。
子どもが「すべり台」と言ったら、
「すべり台のことを思い出したんだね。速かった?」
など、話してくれた内容から会話を一つだけ広げます。
会話が確認テストになると、子どもは質問されること自体を避けるようになることがあります。
大切なのは、正確な報告を完成させることよりも、「伝えたら分かってもらえた」という経験を重ねることです。安全や体調などの確認が必要な話は、会話だけで判断せず、園の先生とも確認しましょう。
避けたい関わり方
質問に答えてほしい気持ちが強いほど、質問が続いてしまうことがあります。
次のような関わりが繰り返されていないか確認してみましょう。
- 「何したの?」「誰と?」「楽しかった?」と連続して尋ねる
- 「ちゃんと話して」と求める
- 園から聞いた内容と違うと、すぐに訂正する
- 「さっきも聞いたでしょ」と叱る
- きょうだいや同年代の子と比べる
- 答えるまで同じ質問を繰り返す
- 「分からない」という答えを認めない
保護者が質問してはいけないということではありません。
子どもが答えやすい質問の形や、会話しやすい時間を探すことが大切です。
SHIPスタッフ園での詳しい様子は、大人同士でも共有しましょう
園での出来事を知るために、子どもだけから詳しい報告を得ようとすると、子どもにも保護者にも負担がかかります。
連絡帳や送迎時のやり取りなどを使い、必要な情報は園の先生と保護者の間でも共有しましょう。
大人があらかじめ一つ情報を知っていると、
「今日はどんぐりを拾ったんだって?」
と、子どもが答えやすい形で会話を始められます。
子どもから話を聞くことと、大人同士が情報共有することを分けて考えることが大切です。
このようなときは相談しても構いません
次のような様子が続き、家庭や園で困り感がある場合は、地域の相談窓口、かかりつけの小児科、児童発達支援などへ相談できます。
- 身近な質問にもほとんど答えられない
- はい・いいえの質問も理解しにくい
- 自分の希望や不快感を伝えることが難しい
- 質問されると強く不安になったり怒ったりする
- 家庭と園の両方で会話の難しさが見られる
- 園の先生から、ことばの理解ややり取りについて相談を勧められた
- 音や呼びかけへの反応など、聞こえ方について気になることがある
呼びかけや音への反応など、聞こえ方に心配がある場合は、かかりつけの小児科や耳鼻咽喉科、市町村の保健師へ相談しましょう。反応だけで原因や診断を決めず、気になった場面を伝えます。
質問に答えられないことだけで、診断や発達上の問題を判断することはできません。
気になる場合は、どのような質問なら答えやすいか、どの場面で難しくなるかを整理して相談すると、支援方法を考えやすくなります。
SHIPでは「答えられたか」だけで判断しません
SHIPでは、質問への正解だけを見るのではなく、
- 質問へ注意を向けられるか
- ことばの意味を理解しているか
- 選択肢があると答えられるか
- 写真や実物があると思い出しやすいか
- 単語、指差し、身ぶりなどで伝えられるか
- 大人とのやり取りを続けられるか
といった姿を丁寧に確認します。
個別活動では、お子さんの現在の力に合わせてやり取りを組み立てます。例えば、写真を見て出来事を選ぶ、二つの選択肢から答える、経験したことを一つ伝えるといった方法を、本人に合うか確かめながら考えます。
小集団では、相手に伝える、順番を待つ、友達の様子を見るといった経験につなげます。友達の話を聞く、自分の番に一つ伝える、分からないときに助けを求めることなども、一人ひとりに合わせて考える支援の例です。
こども家庭庁の「児童発達支援ガイドライン」(令和6年7月)は、「言語・コミュニケーション」だけでなく、健康・生活、運動・感覚、認知・行動、人間関係・社会性を含む5領域を関連づけて捉える考え方を示しています。質問への返答だけを切り取らず、疲れ、理解しやすい手がかり、相手との関係、家庭や園での姿も合わせて整理します。
大切なのは、質問へ完璧に答えられることではありません。
自分に合った方法で、「伝えたい」「伝わった」と感じられる経験を増やしていくことです。
よくある質問
Q1.「分からない」と言ったときは、どうすればよいですか?
答えを強く求めず、「外で遊んだ?」「お部屋だった?」など、質問を具体的にします。それでも答えにくいときは、時間を置いて構いません。
Q2.選択肢を出すと、自分で考えなくなりませんか?
選択肢は、質問の意味や答え方を理解するための手がかりになります。本人が自分から伝えやすくなってきたら、必要に応じて選択肢を少しずつ減らします。写真や指差しなど、伝えるために役立つ方法を無理に外す必要はありません。
Q3.園でのことを毎日聞いてもよいですか?
聞くこと自体に問題はありませんが、帰宅直後の疲れている時間を避ける、質問を一つにするなど、本人が話しやすい状態を優先します。
Q4.何歳までに出来事を説明できればよいですか?
発達には個人差があり、年齢だけで一律に判断できません。家庭や園での困り感、質問理解、意思表示などを含めて確認します。
まとめ
「今日、園で何した?」に答えられないときは、質問の範囲を小さくする、選択肢を示す、写真や持ち物を手がかりにするなど、答えやすい形に変えてみましょう。
一日の出来事を正確に報告させることよりも、短いやり取りを安心して楽しめることが、会話の土台になります。
SHIP中央では、ことばの数だけでなく、質問の理解、意思表示、人とのやり取り、園生活でのコミュニケーションなどを含めて、お子さんの様子を一緒に整理します。
まだ利用を決めていない段階でも、見学やご相談が可能です。
お子さんが答えやすい質問や、家庭・園で気になっている場面について、まずはお聞かせください。
あわせて読みたい記事
- ことばが遅いかもと思ったときに見るポイント|2歳・3歳の発達相談
- 2歳・3歳で指示が通らないと感じたら|家庭と園で整理する5つのポイント
- 一斉指示が通りにくい子は療育で何をする?確認する5つのポイント
- 同じ遊びばかり繰り返す子へ|好きな遊びから世界を広げる5つの関わり【SHIP中央】
- SHIP中央|個別活動と小集団支援を組み合わせる児童発達支援|山梨県中央市
参考情報
確認日:2026年10月3日。家庭での5つの工夫は、資料の支援方針を参考に整理した実践上の提案です。ガイドラインがこの5項目をそのまま推奨しているという意味ではありません。
- こども家庭庁「児童発達支援ガイドライン」(令和6年7月):5領域を踏まえた総合的な支援、本人に合うコミュニケーション手段の考え方(本文13・18・21ページ)。
- 厚生労働省掲載「お子さんのきこえのハンドブック」:聞こえの心配を専門職に相談するための情報。本文では相談先の案内に限って参照しています。
- 株式会社THE SHIP「SHIP中央」:個別活動と小集団支援、保護者との共有、見学・相談の案内。
- 株式会社THE SHIP「見学・体験のご案内|笛吹・中央」:見学・相談の受付案内。
- SHIP公式記事「ことばが遅いかもと思ったときに見るポイント」:ことばの数だけでなく、理解ややり取り、生活場面を整理する視点。

